81 / 153
第四章・14
「いいから、早く行けよ」
「すみませんでした」
ああ、行ってしまう。
いや、このチャンスを失うわけにはいかない!
旭は、口を塞いでいる男の手を、思いきり噛んだ。
「ぃッてぇ!」
「た、助けて!」
何ぃ、と逸朗は出て行きかけた歩みを止めた。
咄嗟の判断だった。
手でスイッチを探り、照明を点けたのだ。
目に飛び込んできたのは、ソファの上で眼を真っ赤に泣きはらしている旭。
衣服は乱れており、彼の身に何が起きたのかはすぐに解った。
「宮城!」
「ま、真柴くん!?」
まさか、知り合いだったとは。
真柴くんに、こんな所を見られちゃうなんて!
ともだちにシェアしよう!