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第四章・15

 逸朗はずかずかと部屋に入り込み、旭に跨っていた男を押しのめしてどかせた。 「宮城、行くぞ」 「真柴くん……」  憤怒のオーラを立ち上らせるαには、近寄りがたい迫力がある。  男たちは、怯んで道を開けた。  そこで、カラオケの曲が終わった。  一部始終を見ながら、船津は平然と歌い続けていたのだ。 「もう帰るのかな、宮城。楽しんでくれた?」 「船、津、先輩……」  信じられない。  僕が、こんなに酷い目に遭ったのに。  そういう風に仕向けたのは、先輩なのに。  涙が溢れ、零れる間際に、逸朗が動いた。

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