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第五章・9
「誰だ、こんな時刻に」
しゃくりあげている旭は涙を拭い、慌てて表情を整えた。
「僕、見てくる」
玄関へ向かった旭。
間を置かずに、短い悲鳴と廊下にしゃがみ込む音が聞こえた。
「どうした?」
旭が指さす防犯カメラのモニターには、今最も忌むべき人間が映っていた。
「船津!」
スピーカーからは、柔らかい声が聞こえてくる。
「宮城、そこにいるんだろう? 開けてくれないかな、外は寒いよ」
逸朗は、大声で怒鳴っていた。
「外で凍え死ね!」
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