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第五章・10
しかし、船津に動じた様子は見られなかった。
「誰かな、君は」
「宮城と同じクラスの、真柴だ!」
「なぜ、その真柴がそこにいるのかな」
「てめえの胸に訊いてみろ!」
「思考が飛躍しすぎてるね。僕が訊いているのは、なぜ真柴がそこにいるのか、だよ」
「解んねぇなら、お前は大馬鹿野郎だ!」
ここまでだ、と逸朗は旭を抱き起して奥の寝室へ連れて行った。
寝室までは、防犯カメラのスピーカーの音も聞こえない。
船津の耳障りな声も、届かない。
震える旭を抱いて、逸朗はしばらく息をひそめていた。
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