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第五章・14

 二人で改めて向き合うと、旭はキスをねだってきた。 「俺、たぶん下手だよ。キスも、エッチも」 「構わないよ」  後は、何も言えなくなった。  柔らかな旭の唇が、逸朗のそれに重ねられてきたのだ。  口を合わせて、しばらく静かに互いの体温を感じていた。  やがて旭が離したので、キスは終わりかと思った。  だがもう一度、彼は唇を合わせてきた。  短いキスを、何度も繰り返す旭。  それはまるで催眠術のように、逸朗を昂らせていった。

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