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第六章・2
「え!? いや、卵が巧く焼けたなぁ、って!」
朝食のスクランブルエッグを作りながら、逸朗はごまかした。
恋人に劣等感を抱いてるなんて、旭には知られたくない。
「着替えて来いよ。もうすぐ、朝飯できるから」
「ありがと、逸朗」
頬に、軽くキスをくれる旭。
(い、逸朗、とか! 朝チューとか!)
真っ赤な顔で逸朗は、旭の後ろ姿を見送った。
昨日の恐怖、少しは和らいだのかな。
俺、役に立てたのかな。
何にせよ、旭は一見いつもの軽やかな少年に戻っている。
少しだけ、安堵した。
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