119 / 153

第六章・2

「え!? いや、卵が巧く焼けたなぁ、って!」  朝食のスクランブルエッグを作りながら、逸朗はごまかした。  恋人に劣等感を抱いてるなんて、旭には知られたくない。 「着替えて来いよ。もうすぐ、朝飯できるから」 「ありがと、逸朗」  頬に、軽くキスをくれる旭。 (い、逸朗、とか! 朝チューとか!)  真っ赤な顔で逸朗は、旭の後ろ姿を見送った。  昨日の恐怖、少しは和らいだのかな。  俺、役に立てたのかな。  何にせよ、旭は一見いつもの軽やかな少年に戻っている。  少しだけ、安堵した。

ともだちにシェアしよう!