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第1話ー4

*  チン、と軽快な音がしてトースターからこんがりと焼けた食パンが顔を出す。薫はバター、風間は甘ったるいジャムが定番だ。牛乳を電子レンジで温め、一方のマグカップには珈琲と牛乳を半々、もう一方には牛乳のみを注ぐ。 「風間、食事の用意できたから。」  相変わらずベッドに横になっているらしい彼に声をかけながら、冷蔵庫から冷やしておいたサラダを取り出す。ドレッシングは、薫お手製のものだ。ことん、とテーブルに料理を置くと同時に、リビング入って来た風間がどこかぼんやりとした様で椅子に座る。 「…なんか、顔おかしいけど。」 「悪かったな。来世はお前好みの顔に生まれてきてやるよ」 「じゃなくて。」  彼の表情が、寝起きの不機嫌さなどではなく、どことなく考え事をしているような顔だったのだ。彼はそれには答えず、両手を合わせていただきます、と言うとマグカップを指に絡めた。1、2、3秒。時間をかけてホットミルクを飲んだ時には、先程の表情は消えている。代わりに、朗笑を浮かべて見せた。 「薫は、俺の事をよく見ている。」  一瞬、薫の鼓動が少し速まる。胸の内に隠してきた彼のへの想いが、ばれたような気になったのだった。 「…まあ、そうかもね」  風間の唐突な言葉に、思わずぎこちない返答になってしまう。それをつい、どこか気まずい思いで認識したあと、それは自分ばかりだと思い直してそっと溜め息を吐くと、気付かれない程度に身体の力を抜いた。  風間は、そんな薫の心中を察すること無く、何時も通りの飄々とした様子でカップに口を付けている。薫はその様子を眺めて頬杖をつくと、平素の彼の自然体な在り方に、少しばかり羨ましさを覚え始める。

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