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第2話ー4
そんな心中を察するはずもない彼らが一通りの噂話を愉しんだあと、邪気のない顔を揃えて素朴な疑問でも投げかけるように薫へと視線を向けた。
「でも、一緒に住んでいるお前が一番よく知ってるだろ?」
実際、風間は人当たりも良く、自然体のままで気さくではあるが、実は周囲には個人的な話をあまりしないのだ。皆が純粋な疑問を持つのも、当然と言えば当然ではあった。
「…さあ。風間も俺も、生活スタイル自体が違うから」
微笑を浮かべつつ曖昧な言葉で返事を濁すと、一同はそんなものかといまいち納得がいかない様子で頷いた。
急速に喉が乾く。薫は生ぬるくなったビールを口に含み喉を潤そうとするが、アルコールをいくら流し込んだ所で、その渇きは取れなかった。
「ま、何にしても?とりあえず、何かあればお前のとこに連絡くるさ。男だし、放っておいても問題なし!」
「まあ、そうかな」
長谷川の結論に言葉を返しながら、ふと思い返すのは今朝の風間の表情だ。再び違う話題で盛り上がりだした長谷川達の声を遠くに聞きながら、食事前に思案顔だった彼を思い出す。風間の事を密かに想うが故に、気にし過ぎてしまうだけだろうか。長谷川達の言う通り、実は風間には彼女が居て、恋人同士の個人的な感情のやり取りを行っているだけかも知れない。彼は今朝、彼女は居ないと言っていたが。
薫の感覚では、彼は割りと個人的な事も話してくれていると思ってはいたけれど、実際にはただ自分がそう思いたがっているだけなのかも知れない。
薫にしても珍しく、数名の居る席で思考を巡らせていると、店員を呼ぶチャイムの音が大きく鳴って、薫を現実へと引き戻した。
「芳野君、飲み物なくなっているよ。何か頼もうよ」
ふいに、心配そうに覗き込む梓と目が合った。手にしているグラスはいつの間にか空になっており、梓が気遣って店員を呼んでくれた事を知る。薫が表情を和らげると、梓の目が嬉しそうに色付いた。可愛らしい人だなと思いながら、飛んできた店員に注文を告げると、梓が物言いたげに再度薫を見ている。
「どうしたの?」
「あの、芳野君って映画好き?」
「割とね。風間が映画好きだから、たまに付き合わされてる」
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