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第4話ー14
散々煽っておいて、あっさりと掌を返される。中途半端にこじ開けられた感情の置き場を、どこに求めたらいいのか途端に分からなくなる。かと言って、彼への感情を自身の中へおし留めて置けるほどの気力も最早ない。
「薫?どうかしたか」
どれくらい黙っていたのか、風間が思いの外やさしい声で言葉をかけた。薫は頬に添えられた掌を掴み、右手を軸にしてソファの上で支えると、覗き込む様な彼の瞳を見返した。
「もう、いいか。」
「…何が」
視線を合わせたわりに独り言ちた言葉は、風間を完全に無視したものだった。それに対し疑問を挟む言葉の先を遮って、振り切るように乱暴に唇を重ねる。
中途半端にソファへと預けられた風間の姿勢が、薫の勢いで後方へとぎこちなく反る。床に置かれていた手が反動で宙に浮いて、体勢を立て直そうとするかのように薫の肩を掴んでから押しやるように動いた。元々同じ男だ。風間の方が力はあるが、上になった体勢である薫の方が有利だった。
湿った腔内で、歯列をゆっくりとなぞると、上顎に舌先のみで軽く触れて体温を確かめる。それがくすぐったいのか、風間が身を捩ってくぐもった声を漏らした。硬くなっていた身体が弛緩し始め、背にしているソファから滑り落ちそうになるのを利用して彼の腰を掴んで下方へ引っ張ると、頭部のみをソファに預けさせた。
「…ッ、…ちょ、と、待て」
有無を言わせぬ薫の唇が、言葉を飲み込むように風間を深く侵食する。掴んだ左手首が妙に汗ばみ、舌先の絡む水音が耳元よりもダイレクトに脳内へと響く。
体勢をずらした事で上衣が軽くめくれ、腰にまわした手が彼の体温を直に感じた。何度となく触れてみたいと思った肌に、迷いなく掌を滑らせると、背骨を辿るようにゆっくりと指先を這わせていく。
「…ッ、ん…」
びくんと一度、身体が大きく揺れて風間の呼吸が荒くなる。肩を押しやっていたはずの手は形ばかりで、本来の意図を忘れたかのように置かれているのみだ。
――身体の中心が熱い。薫は餓えた子どものように彼を貪りながら、ぼんやりと思った。風間を抱きたいと、頭などではなく身体が既に主張している。触れる指先が微熱を放って、肌だけでなく、もっと内奥にたどり着きたいと暴れ出しそうだ。
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