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第28話※
正直、鳥肌が立った。名前からして相手は男だ。何でも出来て、周りから完璧だと思われていた歩はただのホモ野郎だったんだ。
それから周りの奴らから話を聞いてその“渉”とは歩の弟だということを知った。
そして運良くこれから俺が教育実習生として、その渉がいる高校に行くのだ、ということも。
これは運命だと思った。
全てのことに平等で何かに夢中になることのない、あいつの弟を俺が奪ったらあいつは一体どうなるだろうか。
―きっと、俺と同じ思いをする。あいつを負かしてやることができる。
俺はこの幸運を手放すはずもなくすぐに計画を実行し、シナリオはどうであれ結果は成功。
ー
ーー
ーーー
だけど俺は一つ誤りを犯してしまっていた。
俺は考えていなかったんだ。
あの歩が狂うほどに愛した弟に俺が近づいて、これから俺がどうなるか、なんて。
ただただこの時は一つの死に対して悦に浸るばかりで、渉に対して生まれ始めた俺の狂気じみた感情には全く気がつかなかった。
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