29 / 79

第29話※

 「...ん、電話...か、」  すぐ耳元で鳴り響く電話の着信音で目が覚め、俺は大きく欠伸をした。  しかし画面を見て“渉”という文字を見るやいなや俺は一気に意識を覚醒させた。  「もしもし、渉君?急にどうし――、」  『土屋っ、今すぐ俺の家に来てくれ...っ、お願い、お願いだから...っ』  「渉君大丈夫?一回落ち着こう。何かあったの?」  『いいから早く来てくれよ!後で全部ワケを話すから...っ』  「う、うん。分かった、すぐに行く。着いたらワケもちゃんと教えてね?」  『分かったから早く来て...っ、家の鍵開けてるから勝手に入ってきてよ。家、着きそうになったらメールして。』  「分かった。それじゃあ、」  電話に出て1分もしないうちに切られた会話。  いつになく渉はひどく慌てている。...いや、怯えているような様子だった。    ―あの渉が...珍しい。  先程の電話このことを考えながらベットから降りるとグッ、と体を伸ばす。  「早く来て、か。っていっても俺、今起きたばっかなんだけどなぁ」  ―あぁ、なんというか面倒くさい。  こう思うのは悪いことなのかもしれないが、元々俺は好きだ、なんて感情も偽りのまま渉に近づいたのだ。  だから俺自身が渉に信頼されようが、どうされようが俺にはもう関係のないことだから、と割り切ってしまいたくなる。  「歩もいないし渉も、もう用済みなんだよなぁ。」  ―まぁ、教育実習生として高校にいる間、暇つぶしとして弄ぶか。終わったら捨ててしまえばいいだけのことだし。  そしてもう一度大きな欠伸をすると、俺は渉の家へ行くべく、ゆっくりと家を出る支度をし始めた。

ともだちにシェアしよう!