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第48話

 土屋のマンションに着くとインターフォンを鳴らし扉を開けられるのを待つ。  そして数十秒もしないうちに扉は開き、土屋が現れた。  「っ、土屋...なんで今日来てくれなか――」  「シーっ。こんな所で大声を出すと近所迷惑になるよ」  「...悪い。じゃあ中にいれろ」  どことなく、いつもと雰囲気の違う土屋。どこがおかしいとはハッキリわからないが、何か引っかかった。  「....渉君、すこし外を歩かないか?」  ―やっぱり...いつもの土屋だったらすぐに中に入れてくれるのに。こんな日も暮れた、肌寒い中をわざわざ出歩くなんて。  「ほら、行こう?」  「...わかった」  だけど、そんなこと言えるわけもなく、俺は玄関を出て前を歩く土屋の後をおとなしく追った。  今の俺には土屋しかいないんだ。土屋が外を歩こうというのなら俺は嫌でもそれに従うまで。  人気の少ない住宅街。黙ったままの土屋。だけど歩みは止められることなく続いている。  どことなく重苦しい雰囲気。  そんな時間がどれほど続いたのか。急に土屋は歩きながら、すぐ後ろを歩く俺の方を向いてきた。  「渉君はさ、生きてて楽しい?」  「...え?」  突拍子もない質問に俺は目を丸くする。  「だってさ、人に依存して、頼って...なんていうかさ、やっぱり渉君は違うよね。あいつとは、」  「...土屋、何言って...」  「俺もここまでだとは思わなったよ。歩がすごい奴だからさ、少しは色々と期待してたんだけど」  「...っ、なんだよ、それ...!!急に何言い出すんだ、あんたは...あんたは最初に言ってたじゃねぇか、兄貴に興味なんてないって、」  そうだ俺は覚えてる。それは兄貴の誕生日の日。そして俺が土屋への態度を改めた日。  あの時の土屋は嘘をついているようには見えなかった。  それに今までだって...いや、昨日もいつも通りだったじゃないか。  それなのに何だってここまで急に態度が変わって...  「...え?そんなの、嘘に決まってるじゃん」  「...っ、」  ニコリ、と笑い土屋はそう言葉を吐き捨てた。

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