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第52話
―ピンポーン...
鳴らされるチャイム。渉だと思ってドアを開けた先にいたのは―――
―――不自然に首が曲がった歩の姿。
『...っ!』
驚き、離れようと動かす体は金縛りにあっているのか、動かない。
しかし歩は焦る俺にかまうことなく近づいてくる。
そしてすぐ目の前まで来たとき、
『 渉は僕のモノだ 』
歩のその言葉と同時に、俺の目の前は真っ暗になりそこで俺は意識を失った。
―
――
―――
『 渉君はさ、生きてて楽しい? 』
次に意識を取り戻した時、俺はそんなことを口走っていた。
しかも体は言うことを聞かず、勝手に動く。
すぐ後ろ隣には渉がいて、俺のわけのわからない質問に対してポカンとしていた。
『だってさ、人に依存して、頼って...なんていうかさ、やっぱり渉君は違うよね。あいつとは、』
依然として俺の意思に関係なく、勝手なことを話し続ける口。
ただでさえ、不可思議なことが起きているのに...そう思い、焦る気持ちを言葉に出そうとするが、その言葉が形を持って俺の口から発せられることはなかった。
まるで“俺”という名の器の中に閉じ込められてしまっている感覚に、俺は言い知れぬ恐怖を抱く。
もはや、渉との会話の内容など頭に入ってこなかった。
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