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第53話
俺の頭の中はもうパニックで、今の事態からの脱出法を考えることでいっぱいいっぱいだった。
だが、いくら考えようとも状況は変わることなく、体は勝手に動き続ける。
―歩の仕業か、
最後に俺が見たのは、異形をかたどった歩の姿――――死んだはずの、歩がいたのだ。
そう考えれば今の自分の状況も理解できる。...しかも、もしそうだとすれば
“ 渉は僕のモノだ ”
思い出されるのはその言葉。
『...うるさいなぁ、』
その時、やけに冷たく、低い自分の声に反応し俺はそちらに意識を向けた。
『渉君には付き合ってらんない』
人通りが多く、車も多く走る道へと景色が変わる中、俺は相変わらず同じ速度で道を歩いていた。
『嫌だ...っ!!土屋!!』
一つ違うのは、先程まですぐ近くで聞こえていた渉の声がやけに遠くから聞こえたということ。
必死に縋りつくようなその声音に俺はこんな状況でも言い知れぬあの優越感を感じた。
―...?待て、おい...っ、そっちの方は...
だが、俺はすぐにそんな気持ちもかき消された。
なぜなら、俺の体は道からそれ車道の方へと向かっていたから。
まさか、とは思った。だけどそんなこと...
『もう、疲れたんだ。渉君と一緒にいるのが。俺はもう行くよ――――― 歩のところにさ。』
俺はそう言った自分自身の言葉に目を見張った。
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