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第54話

 ――何、言ってんだよ。歩のところって...そんなの...っ、嫌だ、俺はこんな所で死ぬなんて...っ、ふざけるな...ふざけるなふざけるなふざけるな!!俺は生きてまだこれからやることが...  なんとか自分の動きを食い止めようとするが、やはり思う様には動かず、ついにはガードレールの上にまで足をかけ始めた。  そうして一瞬にして車道へと飛び込んだ時、  『 嘘、だろ 』  俺の体は自由を取り戻し、そして...―――――  ―    ――  ―――    「...っ!!...ぁ...はっ...はぁっ、ここは、」  視界に入ったのは白い天井に白い壁。消毒液の匂いが充満した部屋。  ―生きて、たのか?  すぐに自分がいるのが病院だとわかり、俺は気持ちを落ち着かせようと深呼吸をする。  確かに俺は車に轢かれた。それは手足に巻かれている包帯を見てもわかる。  「失礼しま―――あっ!土屋さん、目が覚めて...!」  今の状況を考えていると、突然扉をノックされ看護師が中に入ってきた。  看護師は中に入るなり、やけに驚いた顔をして近づいてきた。  「...あの、俺―――」  「ちょっと待ってて下さい!今、先生を呼んできますから!」  そして看護師はそれだけ言うとすぐにUターンしてどこかへと行ってしまった。  「...はぁ」  それにしても....  いまだにあの夜の感覚がしっかりと体に残っていた。    焦り、動揺、驚き....――恐怖。  ―全て歩が...渉を俺から離すために、  そう思い、俺は背筋をぞっとさせた。

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