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第56話

 久々に帰ってきた家の中は当然のことながら特に何も変わっていなかった。  薄暗い部屋の電気をつけ、着替える。  ―とりあえず渉を見つけたらすぐに俺の家に閉じ込めてやろう。そしてこの2カ月間をうめるようにして濃密な時間を過ごす。  渉は俺のモノなんだ。俺の...俺だけのモノ。  死んだ歩なんかに渡さない。  ソファに深く腰掛け、俺は今後のことに思いを巡らせた。  ―ピンポーン...  「...っ、」  その時、部屋の中にあのチャイムの音が鳴り響いた。  時刻は夕方を過ぎたあたり。外は闇に包まれ始めている。  嫌な予感がした俺は扉を開けることなく、ソファに座り続けた。...だが、  ―ピンポーン...  チャイムの音は  ―ピンポーン...  止まることなく鳴り続け  ―ピンポーン...  その音に苛立ちを感じた俺は舌打ちをし、インターフォンの方まで歩くと受話器を手に取った。  「はい、どちら様で...」  『...土屋。外歩いてたら電気ついてたの見えて、』  「っ、渉君...?」  俺は受話器越しに聞こえたなつかしい声に耳を傾ける。  『外、寒いんだ...中に入れてくれないか?』  そしてその言葉と同時に俺は受話器を置いて、玄関へと向かった。  

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