60 / 79
ifネタ1
「俺のところにおいで」
俺に手を差し伸べ、そういったのは土屋。
「俺がずっと渉君のそばにいてあげるよ。何も怖がることはない。君はただ俺と一緒にいてくれればそれでいいんだ」
付け加えられた言葉はそれだけ。だから俺はその手を取った。
―それなのに、
「渉君、携帯貸して。―――...うん、よし完了っと。...え、何したのって?あぁ、渉君の知ってるメアド、俺以外の全部消したんだ。だって、必要ないでしょ?俺がいるんだから」
土屋は、
「なぁ、同じクラスの生徒と話していただろう?...ダメじゃないか。どうして俺以外の人間と口を利くんだ。明日からは絶対に口を利いちゃいけないよ」
どんどんと、
「あぁ、イラつく。渉君を見るあいつ等の目。渉君を瞳の中に閉じ込めていいのは俺だけなのに」
俺を異常なほどに束縛して、
「渉君、今日から君はもう学校に行ってはいけないよ。大丈夫、もう退学届けは出したし、ご両親からの許可ももらったから。」
俺の全てを支配した。
「これでいいんだ。渉君は何も悩むことはない。ただ、あの3つの約束だけは守ってね」
― 1つ、土屋以外の人間と話をしてはいけない。
― 2つ、マンションから外へ出てはいけない。
― 3つ、土屋の言うこと全てに従う。
それが俺と土屋の間で交わされた約束。
「渉君なら守れるよね?」
土屋の問いに頷く俺。
そうして数年が経ち、今の俺を知る人物はこの世で土屋だけになってしまった。
ともだちにシェアしよう!