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 そんなある日、天気が良かったこともあって俺は1人、ベランダに出てタバコを吸っていた。  「あ...」  ベランダから見えた、人気の少ない小道。 小柄な男子生徒が4人の男子生徒に囲まれてリンチされていた。  地べたに蹲る男。何度蹴られようと何も抵抗しようとはせず、ただただ暴力を甘受している。  ―ここから、あそこまでそう遠い道ではない。走れば5分もしないうちに着く距離だ。  そう考え、俺は吸っていたタバコをコンクリートの地面に擦り付け火を消す。  今みたいな暴力の仕方は嫌いだ。ケンカでもない、一方的なもの。  ベランダを出るとすぐ俺は玄関まで直進した。...のだが、  「...やく、そく」  頭に浮かんだのは土屋とのあの約束。ここまで来ておいて俺は悩んだ。  見ず知らずの男を助けるためだけに、俺は土屋との約束を破るのか...?   今の時刻は午後4時になろうとするあたり。土屋が仕事から帰ってくるのは7時頃。  出ていってもすぐに戻れば土屋にバレることはない。 大丈夫、ケンカ慣れはしてるしあれぐらいなら時間もかからない。  「すぐに、戻ればいいんだ」  外に出ないんだから靴はいらないでしょ?そういう土屋によって俺が持っていた靴は全部捨てられてしまっていた。  しょうがなく俺はサイズの合わない、少し大きめの土屋の靴を借りる。  そうして扉に手を掛けた時、俺はずっと感じていなかったワクワクとした昂りを心の中で感じた。  久しぶりに触ったドアノブ。それはひんやりとしていて気持がよかった。  そっと捻って押せば、ドアは開き...―――俺は外へ駆けだした。  こうして俺は、土屋との約束を初めて破った。

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