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番外編1-5
「はっ、ラッキー。」
渉は静かに部屋を出て、ボソリと呟く。
あれから兄貴に旅館まで連れ戻され、いつものように無理矢理犯された。
だが、今回は前戯が長く、本番が1回で済んだことによって、俺自身あまり大きな負担はかからなかった。
まぁ、簡単に言ってしまえばただ単に俺の体が突っ込まれることに慣れているから、1回ぐらいじゃ平気なだけだが...
嫌な理由だが、今回ばかりは不幸中の幸いと言えよう。
なぜならそのおかげで今、渉は兄貴の目を盗んで部屋から出ることができたのだから。
情事のあと、兄貴は俺が疲れて逃げ出すことはないだろう、と高をくくっていた。だからその隙をついてやった。
兄貴が誰かと電話をして、渉から目を離した時そっと部屋を後にした。
「...けど、金がなぁ...」
セックスを強要されて、終わった後は軽くシャワーを浴び、先程まで着ていた服をもう一度着た。
その姿のまま部屋を出たから、もちろん財布なんかは部屋に置きっぱなしだ。
旅館から街場までは遠く、バスかタクシーを使わなければ行けない。けれども金を持っていないのでそこで交通手段は断たれてしまった。
―しょうがない。旅館内でもぶらつくか...
どうせ夜になったら嫌でも兄貴のいるあの部屋へと戻らないといけないのだ。
今、兄貴の顔を見ないで済むのならどう時間をすごそうと兄貴といるよりはマシなことだ。
―人気の少ない所に行こう
あまり人気が多い場所だと、それだけ兄貴に見つかりやすくなってしまう。
そう思って旅館内の端の方まで歩いてきてしばらく...
「あっ!あの、すいませーん!」
突然、俺は声を掛けられた。
振り向けば、何やら見覚えのある女と見知らぬ女が1人が立っていた。
「覚えて、ないかな...今日、昼頃カフェで会ったんだけど、」
「...あぁ、あの時の、」
そう言われて、思いだすのは兄貴を追いかける際にぶつかった女の姿。
「あなたもこの旅館に泊ってたんだ、」
「...まぁ、」
「え!アキナが言ってた男の子?すごい偶然じゃん」
少しチャラついた容姿の見知らぬ女は、俺を上から下までまじまじと見てきた。
すると隣でアキナというらしいあの女がそのことについて注意をするが、俺は内心、お前もガン見してきただろ、とツッコミを入れたくなった。
「ねぇ、もし暇なら私たちの部屋に来ない?あ、男友達が2人いるんだけど2人とも気さくであなたもすごく楽しめると思うんだ!」
「うんうん!あいつらはおもしろいよー!おいでよ、皆で楽しもう!」
俺の右腕をアキナという女が、左腕をチャラついた女が掴む。
はっきり言って、いつもなら断る誘いだが...
「へぇ、じゃあ行ってみようかな」
俺は笑って了承した。
部屋の中にいれば、兄貴に見つかることはない。いい隠れ家になる。
バカな俺は、単純にそう思った。
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