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第32話

 自分の家に着いてしばらく。部屋のベッドで身体を投げ出す穂波は鳴り続ける携帯電話を見つめる。  聴き慣れた音楽。画面に写し出される名前。  二葉、日向、松高の3人からのメールや電話がうるさいくらいに穂波の気を引こうとしてくる。  「...ほっといてくれよ、」  ついにその音にも堪えられなくなり、穂波は目の前にある携帯の電源を切った。  そうすることによって、静まる室内。穂波の口からはため息が吐き出された。  帰ってきてすぐ、シャワーに入ったため、体に残るのは暴力を振るわれた痕とキスマークのみ。  しかしあれからずっと、自分の体に触れた日向の手の愛撫がしみ込むように体に残っており、何度も体を震わせた。  最悪な状況で叶えられた夢。といっても、その夢の中では自分が日向を抱く側だったが...。  だが、それでも心とは相反して、体はあの時のことを思い出せば簡単に反応する。  「...ッ」  そんな自分に嫌悪しながらも、穂波は反応をしめす下半身に手を伸ばすのをやめることができなかった。  外からは蝉の鳴き声と子供の笑い声が聞こえる。 空は快晴で雲ひとつない青空が窓から見えた。  「ぅ...くっ、あ...」  こんな真昼間という状況の中、穂波の手は下着の中に入り込み、性器を上下に扱きあげる。  くちゅくちゅと小さな水音を立てながら陰茎を扱き、親指で亀頭を弄れば途端に性器は固くなり、勃起する。  頭の中に浮かぶのは自分と日向が一つに繋がる姿。狭い下着の中から昂ったものを出してやれば温い風が先端にあたった。  そしてベッドに横になったまま、穂波は本能のままに性器を扱きあげた。  皮を使ってぬりゅぬりゅと刺激すれば、どっと先走りの汁が溢れ出る。  日向の顔が、日向の体が、日向の髪が、日向の体温が、日向の声が...  『 穂波 』  「...っ、あ゛ぁ...ッ、」  爪先がピクピクと動き、勢いよく手の平に精子が吐き出される。部屋の中には荒い息遣いがやけに大きく聞こえた。  手の中には熱いものが垂れ流れるが、気持ちは急速に冷めていった。  すぐにティッシュで汚れをふき取り、換気のため窓を開ける。  「...最悪、」  少ないながらも普段行う自慰。  だがその時はいつにもまして自己嫌悪は酷かった。

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