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第42話

 「日向に大切にされるお前も...俺を蔑にしてお前を特別視する日向も...―――― 皆、殺してやる 」  「はっ、あ゛...ッ、ほな...み゛...っ、」  「思い通りにならない奴らは殺してしまえばいいんだ。気に食わないしさ、俺が我慢する必要なんてない」  徐々に青白くなるその顔は、人間味がなくなりより一層人形のようになっていく。  苦しそうに歪められる表情を見て、初めて穂波は二葉に対して自ら欲情した。  ぎりぎり、となる締めつける音。そうしていつのまにか二葉は動かなくなり、四肢を投げ出していた。  「あぁ、きれいな首輪がついた」  どこかで聞いたような言葉が、自然と穂波の口からもこぼれ出す。  手を離せば鬱血したのか、指痕が浮かび上がり最後にはそれは首輪のようになった。  「案外、呆気ないもんだな」  動かない二葉から離れ、傍にあった衣服を身につける。尻の穴から垂れ流れるものだけが唯一不快なことだった。  立ち上がり砂埃をほろいながら二葉が言っていた日向の居場所を思い出し、一歩一歩と踏み出し始める。  「...――― ッ、」  そしてベランダの扉の前に行き、ふと振り返った穂波は息を詰まらせた。  白い肌。指痕の残る首。そこまでは先程とは変わらなかった。だが、その表情は苦しみに歪んでなどいなかった。二葉の顔は...―――――― 微笑んでいた。  そこからは振り返ることなく室内に入り扉を閉める。  ― きっと、見間違えだ。  「それより、次は日向の番だ」    振り切るようにして二葉のことを考えるのは止め、意識の外に出す。  今考えるべきことは、自分の思い通りにならない人間を殺すことだけだ。  ――  ――――――  ―――――――――  寝室に向かうためにキッチンの前を通る。そこで目に入った、鈍く光る包丁を手に穂波は寝室へと静かに入った。  ベッドに横になり、少しやつれた表情で日向は眠りについていた。  足音を立てることなく、近づきベッドの上に乗ると日向の体を跨ぐようにして膝立ちになる。  「...っ、」  「日向...やっぱり俺はお前の言う通り気狂いなのかもしれないよ。」  僅かに沈み、軋むベッドの変化に反応し、うっすらと瞼を開ける日向にそう告げる。  「お前に執着してたんだ。でもさ、」  「ほな、み...お前...――― 」  「俺は一からやり直すんだ。今までありがとう。俺さ、日向のことが好きだった。だけどさっき気がついたんだ俺は日向のことがそれと同じくらいに...憎かった...―――― 殺したいくらいにはね」  「やめ...っ、」  そして抵抗される間もなく穂波は包丁を振り上げ...  「 さよならだ、日向 」  勢いよく振り下ろした。

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