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第45話※

 曇天の空。日向のマンションに着き、インターフォンを鳴らすが反応はなく扉に手をかければあっさりとそれは開き、嫌な予感で胸をざわつかせながら松高は中へと入った。  「穂波先輩いますか!穂波先輩!」  相変わらずシンと静まり返った部屋。だが、ここで帰るわけにはいかない、と靴を脱ぎ廊下を歩く。  ― カタッ、  「...ッ!!」  「あれー?おかしいな、」  気配もなく近くの扉が開き、人影が1つ、目の前に現れる。耳には聞き慣れた声が馴染んできた。  「穂波先輩!!...ッ、よかった.俺...ーーー え...?」  「どーして生きてるんだよ。さっき殺したはずなのに。」  目の前に姿を現したのは...――― 血濡れた包丁を持った、穂波の姿。  「まぁ、いいや。また殺せばいいだけの話だし。」  「...ッ!!ほな、み先輩、それ...血、誰の...っ、」  一歩一歩、着実に歩みを進め、近づいてくる穂波。状況が全く掴めなかった。言っている意味がよくんからなかった。だが、身の危険を感じ、とっさに松高は後ろへ後ずさる。  「逃がさない。今度こそ息の根を止めてやる二葉!!」  松高のことを“二葉”と呼び、包丁片手に刃向かってくる穂波。その目は異常なほどに見開き、口元には笑みを浮かべていた。  目の前にいるのは、松高の知っている穂波ではなかった。  体を捻り、避ける刃先。  ― そもそも“二葉”とは穂波の従兄弟であったはずだ。その人物を見間違えたというのだろうか。いや、そんなわけはない。  「穂波せんぱ、ッ...待って!!俺は二葉じゃない!!松高っす!よく見てくださ...----あ"ぐッ、あ」  「おしいなぁ。」  突如腕に走る、鋭い痛み。温かい液体がぬるり、と腕を伝って流れ始める。  腕を刺された。その事実は一気に松高の焦りを掻き立てた。  「おい、待て!!逃がさない、殺してやる!!」  今の穂波に背中を向けるという行為は一種の賭けだった。運が良ければどこかに避難することができるからだ。だが、一歩間違えれば...背中を刺されてそこで終わり。  「日向!!自分だけ自由になれると思うなよ!!」  近づく足音。次には二葉と呼んでいた松高のことを“日向”と、呼び始める。  すでに恐怖を覚えるほど穂波は狂っていた。

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