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第46話※
「...ッ!!」
玄関までだと追いつかれる。そう思った松高は一歩手前にある、開け離れた室内に逃げ込み、急いで扉と鍵を閉めるとパッと見て重たそうな家具を体で押して扉の前に置いた。
そして次にはズボンのポケットの中に入っている携帯で110番通報する。
「あ"あ"あ”ああぁぁッ!!殺してやる!!お前が悪いんだ!!」
ダンダンと激しく叩く音や、包丁を扉に突き刺すような嫌な音が室内に響きわたる。
今まで聞いたことがないほど乱れた、異常な穂波の態度は電話越しの人物にも聞こえたらしく、住所など2.3の質問をされ、すぐに向かうと言われた。
「...ッ、」
そこで安心したからか。急に視界がふらつき、松高は携帯を握りしめたまま床に崩れ落ちるようにして倒れた。
どくどくと血が流れ出る腕。床は自分の血で点々と赤く染まっていた。
「殺してやる殺してやる殺してやる!!ここから出てこい!!」
その間も依然として続く行為。しかし、ついに松高は...
「穂波、せんぱ...」
そこで意識を失った。
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「...っ、」
ふと、ざわつく音と腕への違和感で松高は意識を取り戻した。そして重たい瞼を開ければ、そこには救急隊員の姿があり、松高はちょうど腕への応急処置を受けている最中だった。
「意識が戻ったかい、君が通報してくれた松高君で合ってるかな?」
「...は、はい。そうっす...ぁ、先輩...ッ!!穂波先輩は!?」
すぐに思い出されるのは穂波のこと。救急隊員が来たということは警察が...
「...残念だけど、警官が来た時、君以外には誰もここにはいなかったんだ。君にこの傷をつくった犯人も。ただ残っていたのは、寝室のベッドにべったりとついていた血痕だけ。」
「え...そん、な...っ、」
「でも大丈夫。すぐに見つけ出すから。だから君はまず、この腕の傷をどうにかしよう。深く切りつけられてしまっているから病院で縫わなければ...。その後は、大変だろうけど事情聴取させてもらうね」
松高を落ち着かせるように、優しげにそう言う目の前の人間。
しかし、松高の動揺は計り知れないものだった。
― 穂波先輩どこに...
やはり、目を離すべきではなかったか。逃げるべきではなかったか。何とかしてでも穂波を止めるべきだったか。
そんなことばかりが一気に心を支配する。
― 俺が見つけ出さなきゃ...穂波先輩は俺が守るんだ...。
そして松高は決意を胸に込めた。
ーーーー その決意を遂げることができない、ということも知らずに。
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