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第10話
「俺、あんたが大嫌いだ」
車を走らせて暫く。唐突に千晶はそんなことを告白してきた。
「俺もお前が嫌いだよ」
だから素っ気ない口調でそう言えば、千晶は肩をびくつかせ、足の上に置いてある拳を強く握った。
「そんなの...言われなくたってわかってる!あんたが俺のこと邪魔だと思ってるのも、態度が気に食わないって思ってるのも!全部、わかってんだよ...っ、」
「...だったら何。もっと俺に優しくしてくれって?それなら俺に媚びれば。嫌いな奴でも媚びてくれば多少は優しくなってやるよ」
冷たくそう吐き捨てれば突然千晶は車のブレーキを踏んで車を止めた。
幸い公園まで人通りの少なく、車も通っていなかった為何も起こらずに済んだが、肝を冷やすその行為に堪らず、春臣も車を停車させ千晶の胸倉を掴む。
「いい加減にしろ!ガキだからって何やっても許されると思うなよ」
「っ離せ!触るな、気持ち悪い!!あんただってそんなガキに手なんか出して、吐き気がする!俺、見たんだからな、あんたと誠太が―――― 」
「それがどうした。キスして何が悪い。安心しろ、お前なんかには勃ったりしないから」
馬鹿にしたように鼻で笑えばガッと頬を殴られ、一瞬車の中に危うい静けさが立ち込めた。
テレビに映されることを仕事としている春臣にとって、顔は何よりも大事なものだった。そんな春臣の顔を殴った千晶を憎悪のこもった瞳で睨みつければ小さなその手はカタカタと震え始めた。
「い...いい気味だ。愛想笑いばっかして媚びて、それでしか役をもらえないあんたに顔の傷なんて関係ないだろ。京太も馬鹿だ、こんな奴の世話なんかして。京太にも媚びてるんだろ、そうしないと好意を向けてもらえないから――― ん゛ンッ、」
「ガキが調子に乗るな。お前なんか京太が欲しいと思って生まれてきた子供じゃない。そんな価値の低いお前に俺の演技をとやかく言われる筋合いはない」
千晶の口を押え、どすの利いた声でそう言えば、再び千晶に顔を殴られそうになった。寸でのところで伸びてきた手を掴み、捻ってやれば千晶は小さな悲鳴を上げた。
「水商売してた女のガキなんだ、お前もそれらしく俺の慰み者にでもなってみるか」
春臣は抵抗させる間も与えずに、座席のシートを倒すと千晶の上に乗り両腕をベルトを使って背部でまとめ上げる。そして千晶が穿いていたズボンと下着を脱がせ、下肢を一糸纏わぬ姿にした。
「っ、いやだ!!やめろクソ野郎!!俺に触るな!」
「うるさいな...そんなに叫んでも誰も来ないよ。それとも人呼んでこの姿見られたい?」
春臣の言葉に大きな瞳が揺れる。そして瞼を閉じた時、一粒の涙が流れた。華奢な体は恐怖で縮こまろうとし、次の瞬間には加虐心を擽る瞳でこちらを見てきた。
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