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第49話※千晶視点

 こちらに戻ってきて早1週間。春臣への好意を自覚してからというもの、何をするにも意識がそちらへ向いてしまいどう接していいものなのかも分からない。  また、自分自身でもなおすことのできない無愛想で不器用な性格がそれに拍車をかける。  それでも、それなりに春臣との距離を縮めようと努力していた。  だからだろうか。  「京太が作る飯も美味いけど、お前が作る飯も好きだな」  段々と  「え、なんで俺帰ってくるまで晩ご飯待っててくれなかったの。1人で食べなきゃじゃん」  春臣は俺に  「明日はどこに行くんだ。なんだかんだ俺も楽しみなんだよね」  優しい言葉をかけてくれるようになった。  「ふーん。楽しみなんだ」  にやけそうになる口元を手で抑える。  きっと恋は盲目とは今の自分の状況を言うのだろう。最早これが春臣の演技なのかどうか、今の千晶に判断することはできなかった。  過去に春臣にされたことや自分が春臣にしたこと、脅しなどは全部水に流して純粋に今を楽しみたかった。  最初に嗾け取り返しのつかないことをしたのは自分だが、だからこそ責任を持って誠太を説得して、脅しに使っていた証拠も全部削除して...またゼロから春臣とやり直したい。いや、むしろ今ならやり直せるのではないか、春臣が振り向いてくれる可能性があるのではないかと錯覚してしまう。  それ程までに春臣の千晶に対する態度は徐々に変わってきていた。  - 今からでも、遅くはないのかもしれない  もしも、もしも春臣が振り向いてくれるなら、もっと素直になれるよう努力するし、嫌われないようたくさん尽くしたい。今まで向けることができなかった愛情全てを春臣に捧げたかった。  幼い頃からの執着が憎しみに変わって、それら全てが愛情に変わった今、最早主従関係は逆転していた。  そんな事実にさえ、周りが見えなくなった千晶は気がついていない。  千晶はただ春臣に愛されたかった。  「そういえば、こないだ言ってたけど...お前俺と誠太が会わないようにしてくれてたんだな」  「...あいつ、色々と吹っ切れてからちょっと面倒な性格になったから...」  「でも一緒に俺のこと脅してきてたのはお前だろう?」  ソファの隣に座る春臣の口元は笑っているが目は笑っていない。千晶は一瞬にして目線を逸らし俯いた。  「...あれは、俺も馬鹿だったよ。今は...後悔してる。謝って許してもらえるとは思ってない...だけど俺にできることがあるならなんでもする。誠太のことも説得するし...脅しの証拠も全部削除する。てかそもそも俺が持ってたのはもう全部削除した。ただ、誠太がコピーを持ってて...それはまだ削除できてないけど...けど、俺ーーー」  俯く千晶の頬に手が伸ばされる。その手に促されるまま顔を上げた千晶の視線に映るのは、優しく微笑む春臣の姿だった。  「春臣...」  徐々に2人の距離は縮んでいき、遂には息が触れるほど近くまで詰められた。  千晶の視界いっぱいに、春臣の長い睫毛に縁取られた切れ長の瞳が映る。そして、その瞳の中心に映るのは惚けた自分の姿だった。  「ん...ぅ、」  そっと触れる唇。それはじんわりと温かく、まるで触れ合う部分から溶けてしまうのではという感覚に陥る。  撮影という仕事ではなくプライベートで、ましてや強制的でもなく...こんな風に春臣と触れ合うことができるなんて夢にも思わなかった。  こんな上手くいくわけがない。春臣が自分に愛情を向けるはずがない。何か企んでいるのかもしれない。そう理性が止めようとするがそれを上回る感情...愛しさが、それでもいいから春臣と結ばれたいと願う。  そうして気がつけば触れるだけだったキスは舌が絡むほど深いものへと変わっていった。  意識が追いつかないほど本能的に春臣の唇を貪る。  どちらのものとも知れない唾液は口の端から垂れていく。  「俺に尽くしてくれる千晶は、可愛くて好きだな」  「...っ、」  どれほど長くキスをしていただろうか。ふと唇が離れた時、春臣は変わらぬ優しい眼差しを千晶に向けて愛を囁く。  - 俺も、おかしくなるくらいにあんたが好きだよ。  喉元まで上がる言葉。しかし、それは直前で飲み込まれてしまった。  春臣のことが愛しくて愛しくて、想像しただけで声が震えそうになり好きと言えない。  撮影の時は割り切って言えるセリフだが、プライベートになった途端に言えなくなってしまう。  自分はこんなにも臆病であったのか。  「千晶...ここ、硬くなってるね」  不意に春臣が千晶の熱く昂る下半身に触れた。キスだけで硬くなったそこは下着とズボンを押し上げ窮屈そうにしていた。  「えっ...は、春臣」  「俺が楽にしてやるよ」  そう言うなり春臣はズボンのチャックを下げ下着の上から千晶の性器に口づけ先端を舐めた。  舌で性器をなぞるようにして舐める程に、下着は唾液で濡れていく。もどかしい快感に千晶は眉を潜めた。  「あはははっ、ベトベトだね。ほら気持ち悪いだろうから脱ごう?俺も手伝ってあげるから。」  「ぅ...んっ、」  春臣はソファから降りると千晶の前で屈みズボンと下着を脱がせてくる。グッと下着をずり下げれば、ぶるりと千晶の性器が勢いよく外に出る。限界まで硬く熱くなったそこは先走りと春臣の唾液でてらてらとしていた。  「ふぅ...ん、ん゛」  「ぅあっ、はる...おみ、」  春臣は躊躇なくそれを咥えた。温かい春臣の口腔は気持ちが良くそれだけで達してしまいそうだった。  - 俺のを春臣が...舐めてくれてる。春臣が...  春臣からの積極的な行動に千晶の興奮は止まらない。  今まで頭の中で何度も想像したし、それをおかずに自慰もしたことがある。  それがまさか現実になるなんて...。  - 春臣、好き、大好き。幸せすぎて死んでしまいそう。  舐め、しゃぶり、吸うその動きひとつひとつを見逃さないようにじっくりと見つめる。  あの少年好きの春臣が進んで俺のものを愛撫するなんて...。もう少年でもない俺を愛してくれるの?俺は春臣の特別になれるの?  「あっ、はるおみ...イクっ、」  それからすぐに、千晶は春臣に咥えられたまま口内に吐精した。  「千晶は可愛いね」  精子を飲み込み、春臣は頬を染めて俯むく千晶の顔を見つめる。  「...っ、」  それでもやはり、千晶はくちびるを震わせるばかりで何も言えなかった。  しかし、その表情は幸せに満ち満ちていた。  

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