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代償の痛み 11
薄暗い部屋で、妙に目立つ赤い舌が視線を誘う。
ごまかしが利かないほど勃っている自身に困惑するまもなく、生暖かい感触につつまれ、ニールは悲鳴を上げた。
「ひゃ、めろぉ……なんれ、そんなとこ、舐めてっ」
ぐちゅぐちゅと、なすすべもなく口腔で遊ばれる。
口がうまく回らないのは、酔いのせいか、快感からか。
怖くなるほどの強い刺激に襲われて、きゅんと腰が痺れた。立てた膝がガクガクと震えて、力が入らない。
「んっ、いつもより反応がいいじゃないか?」
「はっ……あ、ああっ、ひがうっ!」
こぼれる先走りを吸い出され、唾液と混じって部屋に水音が響く。
卑猥な音はわざとらしくて、ニールはいやいやと首を振った。
「ずいぶんと、ウブな反応をするじゃないか。ここを、女にしゃぶらせたたことはないのか?」
女、といわれて脳裏に浮かんだのはシャオだ。
「させるわけ、ねぇ……だろっ」
「へぇ、なんだお前……初めてか」
突き出された舌が、中心の硬さを確かめるように筋を舐めてゆく。
見ていられなくて、ニールはぎゅっと目を閉じた。
「やめ、ろぉ……なんれっ」
大きく息を吸いすぎて、子供のようにしゃくりあげれば、笑い声が返ってくる。
「ここに」
「ひゃ、うっ! さわ……なぁ」
長い指で、後ろを探られる。
「指までいれちまってんだ、恥ずかしがらなくたっていいだろ?」
つぷっ、と指先の堅い感触に嬌声が漏れる。
悔しいが、気持ちがいい。何度も繰り返し教えこまれた場所が、刺激を求めて疼き出している。
「やだ、やらぁ……なんれ、するんらよ」
じらすよう入り口を擦られ、息が上がる。
体に力を入れられなくなってニールはうすく目を開ける。
「えふ……れ……む?」
曇り空を思わせる瞳が、じっと覗き込んでくる。
「どっちにも、似やがって」
なにが? と、問うまもなく、ニールはせり上がった己に絡みつく指に、背中をそらせた。
「ひっ! あ……酔って、んのかっ」
指で的確に愛撫しながら、溢れ出す先走りをぴちゃぴちゃと舐めとるエフレムから、目を反らせない。
「あぁ、誰かさんのせいで、飲み過ぎちまったんだろうな」
自分よりもずっと年上の男が、恥も外聞もなく、むしろ美味そうにしゃぶる姿は、体にうずく快感よりもずっと感覚を麻痺させる。
倒錯的な気持ちの良さに流されたくなくて、ニールはエフレムの髪をつかんだ。
「今日は、しなひって、思ったのに」
「酔いつぶれる、お前が悪い」
ひとのせいにするなと、反論する声は、喘ぎ声になりかわる。
絞りだされるよう扱かれ、ニールはもがくようにエフレムの柔らかい髪に指を絡める。
何も、考えられない。
いかされる。
ニールはただ、背中を反らしてあえぐばかりだ。
シャオとの情事は、互いの寂しさを紛らわせるだけのものだった。
直接的に体を求められるような愛撫は、今まで知りもしなかった。
「ひくっ、いっちゃう……!」
子供のようにぐずるニールだが、エフレムの愛撫はやむどころか激しくなる。
「あっ、ああっ! ひあっ! やらぁ!」
ぐっと、下肢に感じる圧迫感。指が二本、深い場所まで差し込まれる。
「とりあえず、最初にいかせてやる」
快感にかすれたエフレムの声が、いきり立つ下肢をくすぐった。
「ひっ!……あっ、ああっ……」
体の奥から押し出されるようにして、ニールは快感を吐き出した。
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