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兄者が呼んだ俺の名を同意だと捉えて、俺はそっと自分の手を兄者の耳の裏へ添える。首筋をとおり、喉仏を撫で、合わせられた着物の襟の中へ指先を潜らせる。相手はじっと身を固くして行為を受け入れている。
――本当にいいんだな。
スゥッと眦 が冷える。本当に抱く、今宵、兄を。
潜り込んだ先で固い兄の胸を揉む。徐々に手を下らせながら、もう片方の手では帯を緩めて着物を肌蹴 やすくする。縮こまった突起を見つけて、指の腹でやんわりと円を描いた。徐々に大胆に円を強く大きく描けば、前はほとんど肌蹴て兄の精悍 な肉体が蛍光灯の光の下に曝 される。
「ふぅ…」
ぷくりと立ち上がった乳頭を弾いて全体を掴むように揉み込めば、兄の口からは息と一緒に噛み殺しきれなかった声が漏れる。
「兄者、足も椅子に乗せてください」
少し屈んで兄を見下ろす体勢のままでは先の行為がやりづらく、兄に声をかけた。そのまま床に跪 き、言う通りにしない兄の足を軽く持ち上げると、動揺した兄者は非難の目で俺を見る。
「ここでするのかっ」
「最後まではしませんよ」
ほら、と促せば兄者は渋々足を椅子に乗せる。ついでに兄者が背を預けれるよう椅子の向きを変えて座り直させた。
椅子の上で足を折り曲げた格好の兄はこの後何をされるのか分かりかねたようで、不安げに俺を見る。
その視線を受けながら、今度は着物の裾から手を這わせ、太腿をなぞりながら中心へとじわじわ近づいてみる。筋肉へ緊張が伝わり固くなる太腿を愛しく思い、下着の上から膨らみを包んだ。
兄が咄嗟 に出そうになった言葉を飲み込む気配が頭上にあるが、手の中の温かく柔らかい性器の感触を味わう方が大事だった。根元から先端までを手の中に納めるように覆い、上下に擦る。
下着の布が撓 んで感触の邪魔をするが、シミをつけるまではまだ我慢だと自分に言い聞かせた。兄の性器は想像していたよりも小振りではなかったが、自分の掌 の中に収まるのがなんとも可愛らしく思う。
そんな兄は自分の股で行われていることを直視できないらしく、眉根を寄せ、目を逸らしている。すぐにそんな余裕も剥 ぎ取ってやると舌舐めずりしながら、俺は下着越しに兄のものを強引に掴んだ。
「っひ!」
短い悲鳴を上げて兄は身体を強張らせると背を丸めて小さくなる。
――そんなことではこの快感からは逃げられませんよ、兄者。と口の中だけで呟いて、擦りながら徐々に下着から性器を取り出していく。ぶるりと飛び出した性器は湿っていて、汗なのか甘汁なのか判断がつかなかったが、先端に親指を押し付けると滑る感触。これに自然と口角が上がる。
「きもちいいですか?」
兄の顔を覗き込むように囁けば大袈裟に身体が震えた。
「それなら良かった」
深く笑んで兄を見るが、兄は固く閉じた目を向けることもない。早く濡れて緩んだ目でこちらを見てほしい、兄者の蕩 けた顔が見たい。
「兄者は口淫はお好きですか?」
何を言われたか分かっていない兄者の困惑顔を見ながら、何食わぬ顔で下着を剥ぎ取る。晒 される無防備な下肢にさらりと目を通して、中心で兆 しているものへ視線を絡める。
兄が床に放たれた下着を目で追う内に股の間へと顔を埋めれば、はたと気づいた後に慌てた声を上げるが遅い。着物の中へ顔を突っ込み、下生えを食 みながら根元に舌先を押し付けると、むわりと香る匂いに性の香りを嗅ぎ取る。
「理衛!」
咎 める兄の声は無視して、片手で球体を弄 びながら舌を滑らせていく。先端に軽く口付けを落として、根本までを一息に舐める。今度は側面を、今度は裏筋を。そのままひとつずつ玉を舌で触って、ちゅうと吸う。
「理衛っ!」
股を閉じようとするのを制し、そのまま頭から呑み込んで黙らせる。いや、黙らせると言うには語弊があるか。兄者は声にならない声を引き攣 ったように出しながら腰を引いていた。腰を引いても背凭 れにぶつかり、それ以上逃げることができぬまま兄の性器はすべて弟の口内へと埋 まる。
「ッ、ぁ…!」
包み込まれた先の生温かく濡れた感触に、兄の雄は悦んだ。それを恥じるように兄は頭 を振るとギュッと唇を噛んだ。
怖がらなくていいと伝えたかったが生憎 口が塞がっていて、俺はしょうがないので優しく口淫を続けることにした。
舌を裏筋にぴったりと添えながら、歯が当たらないように気を遣いつつ唇で輪を締める。唾液をたっぷりと纏 わせつつ、そのまま前後に動けば兄からは苦悶 の声が漏れるが、こんなにも優しい行為なのだから喜んで受け入れてほしい。
指の間を使って濡れた竿を擦り、空いた指で袋を突いてやる。蒸れた熱気が煩 わしくて、下肢に纏 わり付く着物を無遠慮に捲 り上げ、兄の背後へ流す。露 わになった肌に手を添えながらその固さを確かめ、柔らかく丸みのある場所をさがすように彷徨 わせて臀部 へと手を回す。口の中には苦い性の味が広がって、俺の口内を汚す。
「ぃッ!…っ!ふ、りぇぃ……!」
涙まじりの兄者の声は興奮を誘いこそすれ、静止の号令にはならない。鼻息が荒くなるのを感じつつ、俺は必死に兄者の固くなったものを愛撫した。
フェラチオがこんなに顎 も首も疲れるものだとは知らなかったので、途中、兄の手を引き自分の後頭部へと導いたが、兄者は縮こまるばかりで俺の頭を掴んで動かしはしなかった。壊れ物を扱うかのような優しさで、触れるか触れないかの力で添えられた手に、なんとも胸が締め付けられる。力任せに掴んで揺さぶってくれても良いものを。
――またひとりで耐えるのか、と思うと遣 る瀬 無い。同時に憤懣 が湧き上がる。
その思いに突き動かされるまま、今度は少し手荒い奉仕を続ける。ぐぽぐぽと音を立て動かし、じゅうじゅうと下品な音を立てて吸い上げると、蚊の鳴くような声で「やめてくれ」と兄者が懇願する。
無視して尚 も責め立てれば、啜り泣くような息遣いの中、兄者は果てた。
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