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番外 続・バレンタインを教えて

「ねぇ、俺魔王に愛の告白された」  ニマニマと笑う勇者の顔に今すぐにでもナイフを突き立てたかった。 「何だい?宣戦布告?いいよ、買ってあげる」  魔族が寝静まる午前9時。当然魔王様も眠りについている。そんな魔王様とつい先刻まで戯れていたというのだからこれは宣戦布告ととって間違いない。 「魔族はあんまり嫉妬しないって言ってたけどセバスティアーノは嫉妬王だなぁ」  嫉妬というよりは敵意に近いものなのだがこの際どっちでもいい。長年アタックしてきた俺より先に行かれてはインキュバスの名が泣く。 「君は図々しいんだよ本当に。ずかずかと領地に土足で入ってきた挙句魔王様をちゃん付けで呼んでその上抱いててからの愛してください?もう少し礼儀ってものをさ?」 「悪いけど全裸男に言われる筋合いない。露出狂」  はぁ!?と思はず声が出た。一応羽織くらい着てるんだが!?確かに全面オールオープン守備力皆無の格好なのは間違いないのだがこれで外出するわけでもないのだからいいじゃないか。それともこのフェロモンが気に入らないとでもいうのか? 「煩いねぇ君は!ニンゲンはご丁寧に服を着ないとカゼ引く軟弱生物だからそういう考えに至るんだよ。ほんと情けないネ?」 「いや、モラルとかあるだろうが!服くらい着やがれ!」  売り言葉に買い言葉で口論は過熱するばかり。いよいよ大炎上かと思った矢先勢いよくドアを開けられた。 「なんだ。大きな声で騒いでいたのは貴公らだったのか」 「あっ魔王様………!!」 「げっ………」  眠たそうに目をこするのは魔王エストラム。大声で喧嘩をしてしまったせいで起こしてしまったらしい。これはまずい。 「何があったかは分からないが喧嘩はやめた方がいい」  喧嘩の原因でもあったりはするのだがここは言わずに引き下がろう。印象を悪化させてしまったら正室への夢が潰えてしまう。とおもったのだが………。 「魔王ちゃんは俺のものだって喧嘩してたんだから魔王ちゃんのせいっしょ」 「貴様!魔王様になんてことを!!」  またもイグナーツは生意気ですぐに暴露してしまう。もう少しくらい彼の身分も考えてやれないものか。 「なんだ、そんなことか」 「そんなこととはなんだよ~魔王ちゃんは俺のだろ?」  目の前でイチャイチャとして見せるイグナーツに殺意しかわかないが、ぐっとこらえて黙り込む。こんなものに対して毎回怒っていては気が持たないというものである。 「残念だがイグナーツ、セバスティアーノは私の大事な傍付きなんだ。君だけを愛してほしい気持ちもわかるのだがこれは譲れない」 「魔王様………」 「まぁいい。喧嘩するくらいなら二人とも私の部屋に来るといい」  にっこりと笑って二人の手を引く魔王。その誘いは死刑宣告とも思えるレベルではあるが………。 「3P?それはなんか多趣味だなぁ魔王ちゃん」 「こいつがいるのは気が乗らないけど、添い寝の誘いは断りたくないなぁ………」  毎回こうやって丸め込まれる自分たちも悪いのだろうがそろそろはっきりしてほしいところではある。まぁ魔王様の心の傷がいえるまでは強く言えないのが痛いところか。 「私の横では騒がないでくれよ」 「はーい」 「分かりました………」  魔王の大きな欠伸を横目に見ながら三人で寝室に向かう。口論も絶えないがつかの間の平和な時間に不思議とほほ笑んだ。

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