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6.悪戯
熱い昼を過ごしたのちに眠い目を擦りながら席に着いた。寝ずに執務室に来たのは久方ぶりである。こんな顔をしていればセバスティアーノは不機嫌になるというものでどうにもやりずらい。
「いいんだよ、王サマは君だシ?」
「…すまなかった。明日は君と寝よう…」
「そういう問題じゃないヨ、まァいいけど」
ニコッと笑って気にしてないなどと言ったりするが、彼の背中に見えるのはいらいらとしている時の尻尾の動きだった。完全にやらかした…と思って下を向くがセバスティアーノはそうじゃないとつづける。
「魔王様が他の子と寝たのが嫌なんじゃないんだよネ。俺とするときは朝までなんてないからさ。満足させられてないんだろうなぁって自分に嫉妬してるダケ」
逆だ、と言いたかったが焼け石に水な気がして言うのをやめた。こういう話は早めに終わらせるに限る。
「今日は何か予定が入っていたか?」
「ン~?いや?会議もないし、外出予定もないヨ。だから二人っきり、よかったね」
「…………。セバスティアーノ、私は」
「機嫌、直したいんでしょ?じゃぁ、ここで抱かれてよ」
「何を…!ここは執務室だぞ!」
ぐいっと顔を寄せられて私は眉を寄せた。
「わかってるよ。でも普段誰も入ってこないんだからいいじゃない」
そういう問題ではない。仕事とプライベートは分けるべきである。彼との関係もそうだ。自他ともに認める仲ではあっても流石に仕事中に致すのは…。
「じゃぁ、痴漢ごっこ」
「なんだそれは」
「俺がえっちな悪戯をするから、休憩時間まで耐えきったら魔王様の勝ち」
なんだそれはと溜息しか出ないが機嫌が直るのならそれでも…と私は折れた。
「はぁ…それで気が済むのか?」
「モチロン♪」
私は普通の業務をしていればいい。平常心を保つのはなれているから大丈夫だろう。そう軽く見た私は後で痛い目を見ることになった。
「…………、バスティ」
「なーに?」
”えっちな悪戯”とは聞いた。それを了承したのは私だし、そこに文句はなかった。しかし…。
「………………………」
もどかしい。手つきは確かにいやらしく、直接肌を触られることもあった。だがこれという快楽を与えてはくれないのだ。確実に高まっていくのにそれを解消するような触れ合いが一切ない。もう布が擦れるだけで跳ねる程敏感になっているというのに触ってくれないのだ。
「ギブアップ?」
「っ…………。あ、あと15分だろう」
「そうだけド?でも、ここ、こ~んなにしてサぁ…」
「んっ!」
指先でツンツンと軽くそれをつつかれた。たったそれだけなのに私は身を跳ねさせて悶えた。だがそれ以上はもらえない。また脇腹や内股を優しくなでられるだけだ。
「か~わいいネ。あとちょっとだヨ~がんばれ~」
「っ、言われなくても…!」
震えそうになる手をどうにかまともに動かして書類を片付けていくが気が散っている今日は進みが悪かった。特に急ぎのものがあるわけでもないがこれでは後が思いやられる。ま、遅れたらセバスティアーノに押し付けるとするか…。
「途中でギブアップすると思ったけど、粘るねェ、魔王様」
「…、休憩時間は休ませてやらんがな」
「アハ!それ、俺にとっては休憩みたいなものだよ。エネルギーチャージ?」
休憩時間まで耐えきったところで熱が消え去るわけではない。この高まった体をどうにかしてくれるのはセバスティアーノしかいない。
「全く、色事には食いつきがいいのだから私の側近は」
あと数分残っていることを黙ってセバスティアーノを引っ張って執務室から出た。セバスティアーノはもう勝ち負けなどどうでもいいらしい。私室に急いで駆け込むとそのまま私たちは肌を重ねた。
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