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…
ひとしきり話すと車内は沈黙に包まれる。
和真は時折、柊生の運転する横顔を盗み見た。
黒い、少しだけ長めの髪を斜めに分けて、時折その髪を
煩そうに手で後ろに流す。
モデルにように整った顔は少し童顔だ。
顔も良くて、お金もあって、性格も良くて
ー きっと何でも持っているんだろう。。
和真は自分との差に、勝手に落ち込んで
しまいそうになった。
「そういえばさ…」
柊生が気まずそうに口を開く
「…Ωの抑制剤飲んでるんだよね?」
「?…飲んでますよ?」
緩んでいた空気が、また緊張に包まれる。
「だよね?君…ひょっとして効きにくいタイプ?」
「…イエ…どちらかというと効きやすい方で
まわりにはβだって言って育ちました…
え、なんか…出てます?オレ」
「言いにくいんだけど…少し甘い匂いがする」
和真は慌てて腕や肩に鼻をよせて
クンクン臭ってみる。
「自分じゃ分かんないんですよっ
今日一緒にいた奴らも何にも言ってなかったけど
…あ、あいつら皆βだから?」
言いながらバックのポケットを探りはじめる。
「薬持ってる?」
聞かれて和真はウンウンとうなずく。
「…慌てなくても 俺は襲ったりしないから…
それ多く飲んでも大丈夫なの?」
「用量としては問題ないです、気分は悪くなるけど」
「気分悪くなるならやめとけば…」
言うか言わないかのうちに、和真は小さなタブレットを
袋から取り出して、口に放り込んでしまった。
その様子を柊生は、口をポカンと開けて見守った。
ー いや、焦りすぎだろ…。
そう思ったけど言わなかった。
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