40 / 234

そんなわけで二人でキッチンに立つ 柊生がシンクの下から鍋をガチャガチャ取り出す。 「佐倉さん自炊しないんですか?」 「ほとんどしてないね~」 「キッチンめちゃめちゃキレイですもんね」 「月曜と木曜だけ家政婦さんが来て 水回りとリビングは掃除してくれるんだ」 「へぇ~、さすが」 柊生が突然そうだっ、と何か思い付いたように 手を叩いた 「卵入れよう」 「海苔も入れよう」 「お、あるある!」 二人で他愛もない会話をしながら 拉麺はあっという間に完成する。 いただきます!と声が揃ってしまって笑う。 「あー ウマイ!!」 「ウマイ ウマイ!」 ただのインスタントラーメンでも 心が満たされていると こんなにも美味しくて 幸せな気持ちになるんだと思った。 一人で仕事の合間に小腹を満たすため 適当に作って食べていた時 一人で節約のために、仕方なく食べていた時 心の隅の方で 虚しさを感じながら食べた 美味しいとも、不味いとも思わなかった。 和真にとっても柊生にとっても この日食べたインスタントラーメンは 自分史上最高に美味しいインスタント ラーメンになって心に残った。 「発情期、明日か明後日には終る?」 食べ終わってお茶を飲んでるとき 柊生が壁のカレンダーを見ながら聞いてきた。 「うん、たぶん」 「そしたら、アパート出る手続き行っておいで」 「…まだ住むとこが…」 和真は小さく言いかけたが 「うん、だからここに住めばいいよ 落ち着くまで」 和真は柊生の突然の申し出に、思考が止まる。 片手を顎のあたりにおいて、片手は腹の辺りに 巻きつけて 完全に止まった。 ー あれ?発情期終るまでここに泊めてくれるって 話し……じゃ、ないよね?今のって 「俺、パパになろうと思って」 「……はい?」 「パパ活?しようと思って」 和真は更にかたまった。 「えっと…パパ活って…あんまり詳しく知らないけど お小遣いもらったり、デートしたりする アレ?」

ともだちにシェアしよう!