43 / 234
…
「何で 急にそんな事を?」
柊生は和真の言葉の深意がわからず
眉をよせる。
「え、っと、、色々責任感じたり、同情したり
それで、パパになるとか言い出したのかなって…」
「なるほど」
「佐倉さんは、ハゲのおじさんと一緒だから」
「ゴホッ!」
思いもしなかった言葉を投げられて
飲みかけたコーヒーが、気管に入ってしまう。
「だ、大丈夫?!」
和真が慌てて柊生の背中を叩く。
「はぁはぁ…い、一緒……? だった?」
むせすぎて、涙目になりながら
柊生が声を絞り出した。
「いやあれ?違っ、そういう意味じゃなくて、
本当は そんな人じゃないのに、たまたまそこに
俺がいたせいで、こうなっただけ、ってところが
一緒かなって」
柊生は 一緒にするな!と言ってやりたかった。
でもそれを言うには もう遅かった。
しっかりやってしまったし。
どこが違うんだと言われたら
何も答えられないかもしれない。
ー 俺はちゃんとカズの事を思ってる!
体が目当てなんかじゃない!
って…会って2.3日で、何言ってんだ…って
何の説得力もない安っぽい愛の押し売り
みたいになりそうだ…。
柊生は唐突に手を伸ばして、和真を抱きしめた。
「ちょっと、ちょっと…どうしたの?」
そのままソファーに倒れて、和真の上に柊生が
重なる。
「悔しい…」
「ん?」
「ハゲと一緒じゃないって
言いたいけど、言えない」
それを聞いてクスクスと和真が笑い出す。
「一緒じゃないですよ、あれは言葉の あや」
そっと和真の両手が柊生の背中に乗せられる。
「佐倉さんみたいな人に、ここに住めって言われて
嬉しくない人間なんていないよ
悪魔の囁きですって」
「悪魔でも何でもいいよ。俺 今、どうすれば
何て言えば、お前が頷くか頭フル回転中…
ちょっとこのまま考えさせて」
それを聞いて和真が声を上げて笑った。
「ホント悪魔」
和真は柊生の頭を撫でながら天井を見つめた。
ー 何だろう、この胸の奥が暖かい感じ…
「…じゃぁ期限付きで住ませて下さいよ」
「!?えっ?」
柊生はピョコっと顔を上げて和真を見た。
ともだちにシェアしよう!