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「何で 急にそんな事を?」 柊生は和真の言葉の深意がわからず 眉をよせる。 「え、っと、、色々責任感じたり、同情したり それで、パパになるとか言い出したのかなって…」 「なるほど」 「佐倉さんは、ハゲのおじさんと一緒だから」 「ゴホッ!」 思いもしなかった言葉を投げられて 飲みかけたコーヒーが、気管に入ってしまう。 「だ、大丈夫?!」 和真が慌てて柊生の背中を叩く。 「はぁはぁ…い、一緒……? だった?」 むせすぎて、涙目になりながら 柊生が声を絞り出した。 「いやあれ?違っ、そういう意味じゃなくて、 本当は そんな人じゃないのに、たまたまそこに 俺がいたせいで、こうなっただけ、ってところが 一緒かなって」 柊生は 一緒にするな!と言ってやりたかった。 でもそれを言うには もう遅かった。 しっかりやってしまったし。 どこが違うんだと言われたら 何も答えられないかもしれない。 ー 俺はちゃんとカズの事を思ってる! 体が目当てなんかじゃない! って…会って2.3日で、何言ってんだ…って 何の説得力もない安っぽい愛の押し売り みたいになりそうだ…。 柊生は唐突に手を伸ばして、和真を抱きしめた。 「ちょっと、ちょっと…どうしたの?」 そのままソファーに倒れて、和真の上に柊生が 重なる。 「悔しい…」 「ん?」 「ハゲと一緒じゃないって 言いたいけど、言えない」 それを聞いてクスクスと和真が笑い出す。 「一緒じゃないですよ、あれは言葉の あや」 そっと和真の両手が柊生の背中に乗せられる。 「佐倉さんみたいな人に、ここに住めって言われて 嬉しくない人間なんていないよ 悪魔の囁きですって」 「悪魔でも何でもいいよ。俺 今、どうすれば 何て言えば、お前が頷くか頭フル回転中… ちょっとこのまま考えさせて」 それを聞いて和真が声を上げて笑った。 「ホント悪魔」 和真は柊生の頭を撫でながら天井を見つめた。 ー 何だろう、この胸の奥が暖かい感じ… 「…じゃぁ期限付きで住ませて下さいよ」 「!?えっ?」 柊生はピョコっと顔を上げて和真を見た。

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