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お昼になって、部下数人を連れて
オフィス近くの小料理屋に入る。
和惣菜の小鉢を2~3種類 好きな組み合わせで撰び
玄米と、その日の味噌汁がついてくる、ヘルシーが
売りの店だ。
独り身の部下達は食事が偏っている為
柊生は部下に奢る時には、よくこの店に来ていた。
柊生は部下が、あまりへりくだってくる事を
好まないため、休み時間中は砕けた話し方で
雑談をしていた。
この日も仕事の話を混ぜつつ、どうでもいいような
事を話して笑いあっていた。
そんな時、柊生のポケットの中の携帯が、震えて
メッセージを受信した事を知らせる。
画面を確認して、誰からのメッセージなのかを知り
机の下でこっそり中を開いた。
(今日の夕食はハヤシライスでーす!
あ~いい匂い)
メッセージと共に送られてきた写真には
鍋の前で目を閉じて匂いを嗅いでいる和真と
その向こうに家政婦の水野さんも満面の笑みで
写っていた。
見た瞬間、思わず ぶっと吹き出してしまい
部下たちが驚いた顔で柊生を見た。
「室長~ 何やらしい笑い方してるんですか~」
「や、やらしくはないだろっ」
「怪しい~恋人からですか~?」
いや、違うんだと
ごまかそうとジタバタしている所へ
続けてメッセージが届く。
(お昼はキミちゃん特製!かき玉うどんを
いただきました~!ごちそうさま)
今度添付されてきた写真は
空のどんぶりの前で手を合わせて
ごちそうさまをしている和真だった。
ー そこは普通食べる前の写真だろう!
ってゆうかキミちゃんって…会ったばかりの
家政婦と、どんだけ距離つめてんだ
と、心のなかで叫んでしまう。
今度は笑いを必死でこらえ、口を手で覆い隠して
写真を見つめた。
「室長隠してるつもりかも知れませんけど
顔笑っちゃってますよ」
「携帯めっちゃ気になる!見せてくださいよ!」
ヤイヤイ部下たちにからかわれて、
食事の後半は、もう自分が今何を食べているか
分からなくなるくらい、動揺してしまった。
部下達を あしらいながらも、可愛い写真2枚は
手早く、柊生のメモリーに保存された。
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