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14.影
昼食後、1本 電話をかけてから行くと言って
部下たちを先にオフィスに戻らせた。
柊生はオフィスには戻らず、少し回り道をして
近くにある緑地公園へ歩いた。
今日は天気もいまいちで肌寒いから、いつもより
人も少ない。
ゆっくり歩きながら和真へ電話をかける。
(ハイハイ?)
数回コールしただけで、少し高めのハスキーな声が
聞こえてきた。
「水野さん帰った?」
(うん、めっちゃいい人だった)
「初対面で仲良くなりすぎ」
怒ってる訳ではない、むしろ感心していた。
(昼食作ってやってって、キミちゃんとこに
連絡したんだって?体調くずして外出れない
やつが居るから、体に優しいもの作ってやってって
頼まれたって、キミちゃん言ってた)
「まぁ、嘘でもないだろ」
熱出してたし、事故で怪我してるし。
ほっといたら1食ぐらい平気で抜きそうだ。
(何から何まで 気がききますね)
「まあね、ドラえもん だからね」
電話の向こうで和真は声を上げて笑っている
(ありがとね)
電話の声は耳もとで囁かれているみたいだ。
ここに、腕の中に居るみたい…
手のひらが和真の頭をポンポンしたがってる。
(帰る頃、雨かもよ
運転 気をつけてね)
空を見上げると、今にも降りだしそうな
濃い灰色の雲が横たわっていた。
「うん、また連絡する」
自分でも驚くほど、穏やかな声が出る。
ー カズに引きずられてる?
こんな感情初めてかもしれない。
何故だろう?会ったばかりで、一回寝ただけで。
今みたいに、ありがとう、と言ってくれるなら
何でもしてあげられると、本気で思ってしまうのだ。
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