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…
「おかえり」
玄関の前で柊生がインターホンを鳴らすと
中からドアが開けられて、笑顔で迎えられる。
「ただいま」
柊生は 満足気な笑顔で返す。
鍵を持っているのだから自分で勝手に開けて
入ることは出来たのに…。
この、おかえり、が欲しかった。
「お疲れさま」
口の端をくいっと上げて和真が笑う。
柊生の好きな笑い方だ。
「いつもご飯が先?シャワーが先?」
話しながらリビングまで歩く
ー 何だろうこの 新婚さんのような会話は
高揚感がとまらない。
「決まってないよ、カズがお腹空いてたら
先に食べようか?」
ー それで後でゆっくりシようか?
「じゃぁ 食べよう~!
キミちゃんのハヤシめっちゃ旨そうで
食べたくて、食べたくてさ」
じゃぁ俺準備するから、と言って和真は いそいそ
キッチンに入っていく。
じゃぁ着替えてくる、柊生はそう言い残して寝室に
向かった。
1人寝室に入ると、あーもぅ可愛いなぁ!と
一人言がもれてしまう。
一方で、冷静な自分が高いところから
何をそんなに浮かれてるんだ、と引いて見ていて
頬をパシッと軽く叩いてから部屋を出た。
手洗いを済ませてリビングに戻ると、和真が
鼻歌まじりに、ハヤシライスをあたためていた。
テーブルにはすでにサラダが皿に盛られ
置かれている。
「何か手伝う?」
「ん~あ、じゃぁそれチンして
後はやるからいいよ! 座ってて」
柊生は皿に盛られているチキンソテーを
言われるままレンジに入れた。
そして、テーブルには行かずに
和真を後ろからそっとハグした。
「おっとぉ?」
和真は一瞬驚きつつも、逃げるそぶりもなく
そのまま抱かれている。
和真の肩越しに鍋のなかをのぞいて
いい匂いだねと、つぶやくと、でしょ?と
ちょっとだけ振り返る。
そのとき和真の頬の傷が目についた。
事故の時にできた、割りと大きな擦り傷と
ハゲの乱暴によってできた傷が
唇の端に残っている。
きれいな肌、白い肌に痕が残らなきゃいいけど…
そんな事を思いながら、耳の裏側の柔らかい首筋に
唇を押し付けた。
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