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「α同士の結婚は難しいわよ。 私はお父さんと結婚できて幸せだったけど それでも、出産するまでは色々あったのよ 私の場合はあなたと美織を育てているうちに α特有の角が、落ちたような気がしたけど」 私たちは運が良かったんだ、と言われた。 「今ならお祖父様が何て言っても、私や お父さんが対処してあげられるけどj 顔あわせをして、それぞれの親族に御披露目したら もう、引き返せないわよ お互いの顔に泥を塗る事になる それは分かってるわよね?」 「分かってるよ」 柊生はそう言うのが精一杯だった。 それでも別れを切り出す これといった きっかけもなく、そもそも月に1度会うか会わないか という付き合いの中で、気づくと時間はたっていた。 「年明けに親族の顔合わせをしたいって」 杏菜から切り出され、ついに来た、と思った。 良く利用するカフェのテラスだった。 「あぁ」 「何日がいいか、また連絡するわ」 「うん」 「乗り気じゃないのね」 「杏菜はいいの?」 「は?何言ってるのよ、いいも何もないでしょ」 柊生はカフェラテを飲みながら、だよなと笑った。 「実は気になってる奴がいるんだ」 その時は全くの嘘だった。でもそう言ったら 杏菜がどんな反応するだろうと試す気持ちだった。 「いいじゃない?結婚したら別れろなんて 私言わないわよ、でも妊娠だけは気をつけて ややこしい事になるのは ごめんよ」 あっさり言われた。 「そいつはΩで俺の子供が生みたいって言ってる」 「それは困ったわね」 杏菜は、だからどうしたの?とでも言うような 顔で俺を見てた。 「正直、結婚迷ってるんだ」 「つまらない理由で迷うのね 一時の感情に振り回されるなんて あなたらしくないわ」 杏菜は真剣に取り合わなかった。 柊生もその時は食い下がる事はしなかった。 だってそんな相手いなかったから… あまり深く追求されたらボロが出そうで それ以上戦うのをやめた。

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