63 / 234
…
「…ゴメンね」
ー よく謝るαだなぁ
和真は、もういいってば、と笑った。
「でも、噛む真似は笑えないから
もうしないで」
体を繋げながら頸を噛まれたら番になってしまう。
番になったΩは、その相手以外と性交する事が
できなくなる。体が受け付けなくなるらしい。
そればかりか発情期の時期はその相手と離れられなく
なり、それが叶わないと病んでしまうという。
「もうしない」
「よし!じゃぁ 服着よう」
「あ、今なら俺が言うこときくと思った?」
「ばれた? 」
二人でクスクス笑いあった。
「あれさ、噛むまね? 冗談っていうか…
ふざけたわけじゃないんだよ」
「何ソレ、余計怖いんですけど」
「欲情して噛みたくなった。初めてだよ…こんな事
ヒートのせい? 」
「俺のせいかよ」
和真は笑いながらつっこんでくる。
「俺、発情期もうほとんど抜けてると思うよ
柊生さん1人でラット起こしてるだけ」
「おいコラ、人を犬みたいに言うな」
言いながら和真のわき腹をくすぐった。
「あっ!ちょっと!やめてっ
だって本当だもん」
背中を向ける和真を後ろから捕まえる。
くすぐられて息が上がった和真が落ち着く頃
柊生はもう一度、もうしないから、と
独り言のようにつぶやいて、肩にキスした。
和真も うん、と うなずいた。
背中から和真の手を握って、甲の傷の横に口づける。
わざとチュッと音を立てて。
「早く治れ~」
呪文のような言葉が聞こえてきて、
和真はクスクスと笑った。
キスは首筋、肩、背中と続いていく。
仰向けにされて、重なるように柊生が上になる。
肘をついて体を少し浮かし、体重がかかりすぎない
よう気をつかいながら。
こんどは和真の頬をプニっと柔らかくつまむ
唇の端の傷を眺め
「ハゲおやじめ…」
と、眉間にシワをよせた。
和真は吹き出して笑った。
「何を言うかと思えば…」
「カズの口好きなんだ
もうこんなとこに怪我するなよ~」
「フフ、ハイハイ」
そしてまた優しくキスをして、電気を消した。
ともだちにシェアしよう!