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代行運転を頼み、後部座席に乗り込むと 2言3言、話して和真はすぐにウトウトし始めた。 ー コイツ酔うと眠くなるタイプか 車の動きに合わせて首が 右、左と倒れて 辛そうだ。 柊生は和真の首をつかまえて、自分の肩にもたれ させた。すると一瞬和真は目を薄く開けて。 自分から柊生にすり寄っていく。 両足を、柊生の腿に ひっかける様に乗せて 柊生の左腕に両手を絡ませて、腿の上で恋人繋ぎを する。最後に満足したようにニコと笑って 柊生の左肩に顎を伸せて、また目を閉じた。 ー 左が重い…けど嬉しい…。 なにこの状況 柊生は気になって運転手をチラリと見た バックミラー越しに一瞬だけ目があった。 男二人が後ろでイチャイチャしだしたらそりゃ 気になって見るだろう。 50代前半くらいに見える運転手は、軽く会釈をして 視線をそらし、見なかった事にしてくれるようだ。 まぁ見られても平気だ。 甘えられて舞い上がってる。 でも顔はクールに窓の外の風景を眺めた。 まるで寝技でもかけられているように 身動きがとれない。甘い重み。 首を少し傾けて顔を覗きこむと うっすら口を開けてスースー寝息をたてている。 ー ああーかわいい。何時間でも耐えられる。 …でもやっぱり早く帰ってめちゃくちゃしたい。 そんな病んだ頭のまま、和真の着ていたフードを 片手で引っ張り、和真にかぶせた。 和真は少し煩そうに顔をしかめたものの そのまま眠り続けた。 フーディーを着ていてくれて良かった。 赤ちゃんのような寝顔は自分だけのものだ。 家に付くまで、柊生の頭の中では Can't take my eyes off of youが エンドレスで鳴り響いていた。 マンションについても、和真は眠そうに 柊生にもたれながら歩いた。 エレベーターに乗り込み、セキュリティーカードを かざす。ドアが閉まるとやっと二人きりの空間だ。 痺れて感覚がおかしい左腕に、相変わらず和真が ベッタリくっついて離れない。 「しゅうちゃん…ん~」 顔を上げてキスを迫ってきた。 「こら、カメラあるから」 思わず後ずさる。 ー そうか和真は酔うと眠くなって、あまえんぼに なるのか…これは家でも飲まなければ。

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