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柊生は走り出してしばらくすると 路肩に車を停めた。 携帯を取り出して電話をかける。 少し長めにコールして相手が出た。 「早い時間にゴメンね」 (いいけど、どうしたの?) 「今日奢るからメシ行こう」 (急だな…まぁ いいよ。約束だったしね) 「傑くんに聞いてほしい事があるんだ」 (…なに?あらたまっちゃって) 「会ったときに話すよ、俺今日は飲めないから クリニックまで車で迎えに行く」 ( …分かった、待ってるね) そう言って電話は切れた。 穏やかな親友の声を聞いて心が落ち着いた。 寝不足の頭はずっと霞がかかったようで ソワソワ落ち着かない。 助手席を見れば、和真が窓に額をくっつけて 外を眺めている。 そして時折こちらを見て口の端だけ上げて笑う。 ー ヤバい幻覚が見える。。 完全に沼にはまってる。 独占欲がどんどん溢れて、自分がαだった事を 思いしる。 友達だろうと何だろうと自分以外の人間に 心を許す姿を見ていられない。 束縛するような事を色々 言ったけど ハッキリいって全然足りない。我慢してる方だ。 本当は家に閉じ込めて誰にも会わせたくない。 酔って誰かに甘えたりしたら…。 そんなの見たら発狂しそうだ。 過去の男の記憶さえも邪魔だ。 どんな事をしてたらあんなフェラするように なるんだ。 想像するだけで嫉妬でクラクラしてくる。 自分はおかしい。 自覚ありだ。 女も男も、αもβも、、Ωだって ぜんぶ経験済だ。 今さらこんな感情を誰かに抱くなんて 思ってもいなかった。 傑なら引き戻してくれるかもしれない。 手放してしまいそうな理性を。。

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