88 / 234

「初恋!? …って、この年で初恋なわけないだろ」 「あれ?違った?俺は恋愛してる柊生君 見たことなかったから」 「クッソー 言いたい放題言いやがって~ そもそも 会ってまだ1週間もたってないのに? これが恋?」 「1週間もたってないのにね」 傑はビールを一口飲んで、指先で唇を拭った。 「でも、その恋は前途多難だね 杏菜の事もそうだけどさ、東園(あずまえん)グループの 跡取りの相手が高卒無職って…柊生君の身内を 納得させるのは時間と気合いが必要だよ」 「…あぁ だろうな」 「彼もさ…和真君? 萎縮しちゃうかもね」 「まぁ、それは関係が発展したら考えるよ」 「…そうだね!さすが優等生 ちゃんと冷静じゃん」 茶化すなよ、と笑ながら柊生はグラスの残りを 飲み干した。 「柊生君…もしさ… もし和真君がとんでもない悪魔でさ、全部芝居で 柊生君のお金目当てで近づいて来たんだとしたら どうする?」 「それがさ、一番怖いんだ」 「…だよね」 「いや、そういう意味じゃない」 柊生はその日一番自信ありげに笑った。 「それでも全然かまわないって思ってるんだよ 金なんかで釣れるなら安いもんだって そんな風に思う自分が1番怖いんだ」

ともだちにシェアしよう!