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…
「その人ひょっとしてイケメン?」
「は? …まぁ、、イケメンかな 」
「ふうーん」
「……何だよ」
「ネギ手出されるの待ってんじゃない?」
「ばっ!」
バカ言うな、と言いたいけど後ろめたすぎて
言えなかった。
「金持ちでイケメンか~
まぁ そうなるよなぁ」
政実は 焼き鳥の串を眺めながら、1人で納得した
ように、うんうんとうなずいた。
「お前、かってに決めるなっ」
「じゃぁさ、ネギは?ほんっとーにその人の事
何とも思ってないって言えるの?」
ー 何とも? なんともって何?
「感謝だけ?ちょっとは好きになっちゃったり
してないの?」
ー 好き……?
「あ、考えてる~」
政実がニヤニヤしながら脇腹をつついてくる
「ちょ、バカやめろ!」
「まぁそんなドラマチックな展開じゃ
しょうがないよね、好きにもなるよ」
「だから勝手に決めるなよ…」
政実がまぁまぁ、となだめるように和真の頭を
ガシガシと乱暴に撫でた。
「…そんなの 分かんないよ」
和真は店内の喧騒にかき消されそうなほど
小さな声で答えた。
でも隣に座っている政実には届いたようだ。
笑顔が優しくなったから。
ごまかすつもりではない、本心から出た言葉だった。
好きとか嫌いとか単純な答えは出ない。
でもひとつだけ分かった事がある。
ー 俺、政実のこと ふっきれてる。
恋人ができたと聞いた時のモヤモヤ感も全然ない。
今なら素直にのろけだって聞ける。
スキンシップ過剰な和真と政実は、よくまわりから
お前ら できてんの? と突っ込まれた。
まったくその気のない政実は笑って、そうだよ、と
平気でキツい冗談をとばして
和真もそれにのっかって、知らなかったの?
などと言って笑っていた。
まったくその気がないからこそ、言える冗談だと
分かっていたから、本当は苦しくて仕方なかった。
こんな風に頭を撫でられた時も、別れた後に
胸が焼けるような虚しさに襲われた。
でも今日は全然何も感じない。
柊生の手を思い出しただけだ。
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