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「日本人はそんなにイチャイチャしません」 「カズってなんか触りたくなっちゃうんだよ」 「じゃ、動画消すまで触るの禁止ね」 柊生が驚いた顔で、一瞬だけ和真を見た。 「交換条件出してくるなんて!怖い子!」 「人のヤバい動画とって、ウキウキしてる ヤツの方が怖いわ!」 「じゃぁさ、今日夜一緒に見よ!そしたら消す」 1人でニンマリ笑って、エロい想像でもしている ような顔を見せる。 ー この人頭いい はずなのに どっか壊れてるな~ 「……分かった…じゃぁそうしよう…」 ー その時の方が確実に消せるかも。ロックも 解除してもらえるし 「お、意外と素直だね」 「約束は守ってもらうからね」 家に着くと柊生は てきぱきと着替えて準備を整え 数分で玄関に戻った。 「今日はちょっと遅くなる、食事適当に先食べてて」 「…え?そう…うん…分かった」 「あれ?寂しい?」 「子供じゃないんだから んな訳ないでしょ」 「つまんないの」 そう言うといつものように柊生が手を広げるので 和真は、当たり前のようにハグしようと近寄って ハッとして後ろに飛びのいた。 「あ、触らないんだった!」 「はぁ!?」 「いってらっしゃい!気を付けてね」 一歩ひいた所で手をヒラヒラ振った。 「か、かわいくない…」 柊生は食い下がろうとして、時計を見てやめた。 「今日…帰ったら覚えてろよ…」 「ハイハイ」 柊生は大袈裟にため息をついて、何度も和真を にらみながら出ていった。 ー いってらっしゃいのチューは 別だろう普通… 口のなかでぶつぶつ言いながらエレベーターに 乗り込む。 巻けるだけ巻くように死ぬ気で仕事してやる! そんな事を考えて腕時計を見た。 その時 閉まりかけたドアが開いた。 ドアの前には和真が立っていた。 キョトンとする柊生が言葉を発する前に タックルでもするように和真が柊生に抱きついた。 突然の事に対応できなかった柊生の背中が エレベーターの壁に派手な音を響かせてぶつかる。 ちゅーと音がしそうなキスをして 柊生の腕が 反射的に和真の腰に回される前に 慌てるように体が離れた。 「約束 忘れないでよ!」 そう言い捨てたかと思ったら、バンと音がなるほど 強い力で閉めるのボタンを押して、和真はさっさと 背を向けて出ていってしまった。

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