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柊生は笑って頷いて、ソファーに座る和真の股の 間に体を入れ、細い腰に両手を巻き付けた。 顔を埋めて深く呼吸する。 「カズの匂い」 先ほどまで寝ていたせいか、和真の体はいつもより なま暖かかった。 和真は笑って寝ぼけた顔のまま、柊生の頭を撫でる。 「そうだ、見積りもらってきたよ」 「うん、見たよ。最短でやってもらったら?」 「…分かった…じゃ、来週頭に移してもいい?」 「うん、あ、そう言えば明日原付も来るって… 昼間に連絡あったんだ」 「マジ?やった! ありがとう~」 柊生は顔を上げて、和真を見た。 「気をつけて乗れよ」 「うん 了解!」 笑った顔は本当に嬉しそうだった。 和真の生活が動き出す事が、嬉しいようで どこか寂しい。 「着替えてシャワー浴びてくる、寝てていいよ」 住むところが安定したら、本格的な職探しが始まる。 そして仕事が見つかって落ち着いたら 和真は、ここを出ていく。 シャワーを浴びてリビングに戻ると。 和真はまだ起きていた。 以前自分が勧めたアメリカドラマを食い入るように 見ている。 「眠くないの?」 言いながら、冷蔵庫からお茶を出して飲む。 「うん、目が冴えちゃった。 さっき奥さん死んじゃったよ、今めっちゃヤバい」 柊生はお茶を持って、和真の隣に座った。 「あー思い出した!ここヤバかったよね」 和真は時々小さな声を漏らして、ビビりながら ゾンビのドラマを見ている。 柊生はそんな和真を笑って見つめた。 「これ、飲んでいい?」 柊生のお茶を指差す。 「いいよ、っていうか汲んできてやろうか?」 一口でいい、と言って柊生のお茶を飲む。 1話見終わって、和真が はーとため息をついて 寝よっか?と柊生を見た。 柊生も うん、と返事をした。 「あ、そうそう、年末はなんか予定ある?」 柊生がコップを片付けながら聞いた。 「クリスマス飛ばして年末の予定?」 和真が笑った。 「クリスマスはとりあえず置いといて、 年末はのんびり旅館で年越ししたくて 2泊くらいどうかな…いい温泉旅館があるんだ」

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