111 / 234

「他に誰がいるの」 「~~~っもういい、見た!消して!」 和真は顔を伏せたまま、手探りで携帯を 取り上げようとする。 柊生はその手から逃れて携帯を高くかかげた。 「まって、まって、最後の かわいいから!」 和真はベッドに倒れこんで布団をかぶり 耳をふさいだ。 (ダメ…この体勢、いっちゃいそう) カメラに近づいたせいか、クリアに和真の声が 録音されていた。 「ね、ね? エロいよね?これ誰?」 柊生が嬉々として和真の布団を剥ごうとする 和真はガバッと起き上がって、もう一度 携帯を 取り上げようと、柊生の手を捕まえた。 「約束だから消して!」 顔が真っ赤だ。 「分かった、分かった じゃぁ とりあえずキスして!」 「意味分かんな…!」 柊生は和真の上に被さって、逆に和真の両手を 捕らえてベッドに押し付けた。 「勃った」 和真は柊生の言葉を無視して横に転がった 携帯を見る。 「手、痛いっ」 言って顔を歪めた。 朝の手首の痕を思い出した柊生が 反射的に手を離すと 和真が すかさず携帯を手にした。 「あ、コイツ!」 柊生に取り上げられる前に 和真は消去のボタンをタップする。 「あぁぁっ!!」 柊生がこの世の終わりのような声で叫んだ。 「いや、反応おかしいでしょ 消すって約束してたし」 和真は勝ち誇ったように笑った。 柊生が、うつ伏せになっている和真の上に被さって ガックリと倒れる。 「ちょっと、ねぇ!クラウドとか大丈夫? そっちも消してよね」 「俺の、カズが…」 「ハイ?」 背中の柊生を覗きこむようにして見る。 「元気がない時に見ようと思ったのに…」 「なんの元気だよ」 和真はクスクス笑った。 体を反転させて、仰向けになると 落ち込む柊生の顔を両手で挟んだ。 「俺のカズはここでしょ」 ぎゅうっと手に力を入れて挟むと 柊生の唇がムニと飛び出す。 その顔を見て吹き出して笑う。 「ヒドイ…」 潰された顔のまま柊生が言った。 その唇に和真が短いキスをして、また声をあげて 笑う。

ともだちにシェアしよう!