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しばらくすると、パーマのかかり具合をチェック するために、三井が戻ってきた。 「あれ?柊生ちゃんトイレ?」 「外です、電話かかってきて」 和真が外へ視線を送ると、三井もそちらの方を見て あぁ、と頷いた。 ロッドを外して髪を見て、またタイマーをセットした。 「柊生ちゃん お友だちが多いから心配じゃない?」 和真は鏡ごしに三井を見る。 「こんな風に誰か連れてきたのは初めてだけど…」 柊生に、他にも付き合いのある相手がいるんだと 暗に言いたいのだなと思った。 「同時進行はないって言ってたけど…心配した方が 良さそうですか?」 そう言って、口の端で笑った。 「へぇ、そんな事言ったんだ…」 「まぁ、だからといって俺が特別じゃないのも 分かってるんですけど…」 へらっと笑う和真を三井が鋭い視線で見る。 「それってキミ自身が柊生ちゃんとは遊びで いいって思ってるから?」 言葉にされると、何だかとても悪い事をしている 気がしてくる。 ー そういうこと? 柊生がいつか婚約者と結婚しても、仕方がないと 思いながら、関係を続けているのは…。 「何の話し?」 いつの間にか戻ってきた柊生が、入り口で腕組をして 三井を睨んでいた。 「口説いてる…?」 あ、聞こえた訳じゃなかったんだ、とホッとした。 「口説いてないし」 三井が笑って ねぇ、と和真に同意を求める。 「俺が柊生さんに遊ばれてるんじゃないかって 心配してくれたんだよ」 「おまえ、余計な事を…」 柊生がさらにキツく三井を見る。 「そんなストレートに言ってない、言ってない!」 三井が慌て出したところでタイマーが鳴った。 「ハイハイ!もう一度液かけるね~」 そう言って、先ほどの女性を呼んで 三井は出ていった。 「アイツが言った事は気にするなよ」 柊生が耳打ちするように呟いて、ソファーにむかう。 「しないよ」 笑って返したけど、内心では三井の言葉が何度も リピートされて消えなかった。

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