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「思った以上にイケメンになっちゃったね」 ケープを外しながら三井が言った。 「おかげさまで」 和真はニッと笑った。 柊生だけ何とも言えない表情で和真を見ている。 3ヶ月以上ほったらかしで、昭和のロッカーの ようだった髪が、襟足が隠れる程度に切り揃えられて トップは少しだけ長めに、でも緩めのパーマで軽さが 出て、今時の若者らしさと、清潔感が出た。 「どうなの?」 立ち上がって柊生の傍らに立つ。 「…うん、かわいいね」 小さな声で言って和真の前髪を触る。 「何?なんか文句あるの?」 三井がイラついたように柊生を睨む 。 柊生はただ首を振る。 「何よ?見すぎじゃん」 恥ずかしくなった和真が照れ隠しに体をぶつけた。 「目がよく見える」 「切ったんだから当たり前でしょ」 三井が前髪をもう一度手のひらで流してセットを 直す。 「彼目が印象的だもんね、今まで隠れてて 勿体なかったね。これ、カラコン入れてる?」 髪を触りながら和真の目を覗きこむと また柊生が、和真は裸眼だよ、と間に割って入る。 肩を掴んで さ、帰ろう、とレジへ促してきた。 会計を済ますと、三井がドアの外まで見送りに 出てくる。 「和真君また来てね」 そう言って営業スマイルで名刺を渡された。 「来るときは俺を通せ」 「うっざ、こんな束縛系で平気?」 三井の言葉に和真も、う~んと顎に手を当てて 考えるフリをする。 「柊生さんなら平気かな?」 そう言うと三井が眉を寄せて まじで?とこぼした。 本心だった。 まだ短い付き合いだからかもしれないが 和真にとっては、面倒くさいと思いつつも 何だか憎めない可愛らしさがあるのだ。 和真の言葉に満足した柊生は、ニッコリ笑って和真の 頭を撫でた。 「ハイハイ、もう好きにしてくれ!じゃぁな」 三井は呆れ顔で片手を上げると、店に戻って行った。 二人で歩き出して名刺を見ると、裏側に (いじわる言ってゴメン。柊生ちゃんをよろしく) そう、手書きで書かれていた。 和真はそれを柊生に気付かれないように ポケットにしまった。

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