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26.我儘

穏やかに晴れた日曜だった。 風も凪いで。 ふたりでゆっくり目覚めて、ブランチを作ったり 洗濯や、掃除をして。 前日に買った物が次々に届いて 柊生がそれを一通り、着せたがり 和真は面倒そうにそれを受け入れ 着せられて 脱がされて やる。 片付いたリビングはあっという間に 買ってきた物で散乱して ベッドにも行かず肌を重て。 柊生の部屋で二人きりでいると 世界に二人しかいないみたいだった。 時間が止まっているようで。 でも実際は思っているより早く 時間は過ぎてしまう。 夕方になって近所のスーパーに買い物に出かけた。 何か目的があって、というよりは散歩の為。 二人で別の世界から現実の世界に帰るため。 まるでリハビリのように二人でゆっくり歩いた。 「この辺の木って桜なの?」 川沿いの細い歩道と車道の間に並んでいる 街路樹を見ながら和真が聞いた。 今は枯れ葉すら1枚もない寒々しい姿の幹。 「そうだよ」 「家の近所に桜がこんなに見れる所が あるなんていいね」 あたりまえのように手を繋いで歩く。 和真は今まで誰かと手を繋いで歩いた経験が無くて 実は少し気まずい。 だから無駄にしゃべってしまう。 「咲いたら また散歩しよう」 柊生が確認するように和真を見て言う。 桜の季節は まだ先だ…。 約束では柊生の家を出ている頃。 「…そうだねぇ」 それでも、たとえ離れて暮らしていたとしても 散歩くらい許されるかもしれない。 「言おうか迷ったんだけど…」 不意に柊生が真面目な顔で話し出す。 「ん?」 「ちょっと前にメールが来て… 今度の火曜に 杏菜と会うことになったんだ」 思ってもみなかった名前が出てきて 和真は一瞬固まってしまった。 「…あ、そう」 「うん、だからちょっと帰り遅くなるよ ご飯食べてて」 「……分かった」 バカみたいに最低限の返事しか返せなかった。 柊生は仕事で遅くなる時と同じような顔で 話していた。 どんな話をするのか、どこで会うのか 聞きたいことは色々あったけど なんだか聞くのが怖くて聞けなかった。

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