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…
顔も見ないで出てきてしまった。
今日は飲むかもしれないと、車ではなく
電車に乗るため駅へ向かっていた。
ー 言わなくていいことを言ってしまった…。
和真が負い目を感じていることは分かっていたし
それは仕方がない事かもしれない。
あんな風に責められたら、そりゃ言葉もつまる。
本当はいつも以上に優しくキスしてハグして
行ってきますを言いたいと思っていたのに。
駅のホームで電車を待ちながら
今すぐ帰って抱きしめようかと、本気で考える。
どんなつもりでもいいからここに居ろと言ったのは
和真に負い目を感じてほしくないから言ったんだ。
金目当てでも、自分との関係が単なる成り行きでも
堂々と わがままを言って、堂々と甘えて欲しかった。
誰に何を言われようと気にせずに。
自分にも杏菜という負い目がある。
婚約者がいるからと、期限があることを納得した
相手とだけ付き合うのは気楽だった。
そういう意味で杏菜の存在を、今までは都合よく
使ってきたのだ。
和真との事も、最初は、心のどこかで
面倒になったら いつでも切ればいいと
思っていた気がする。
いつか言われた、結婚するくせに、と。
和真はそんな自分の心の底が
見えていたのかもしれない。
杏菜との関係が消えないかぎり、自分自身も
前に進めないと思った。
ー 今日で終わらせる。変えていく。
この気持ちが、傑の言っていた「恋」なのかは
正直まだ半信半疑だったけれど
もう、そんな事はどうだってよかった。
ー 今、俺には
和真以上に欲しいものなんて何もない
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