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和真は首を傾げる。 「あなたはどうして柊生と結婚したいの?」 長い付き合いの恋人という設定を守るためなのか 呼び捨てで呼ばれて柊生はドキッとした。 「そういう約束だったもの 家柄だって文句ないし 私たちって意外と考え方も似てるし うまく行くと思うの あぁ、彼のルックスも気に入ってるわよ」 言いながら柊生に視線を向ける。 「残念だけど、あなたとでは結婚は無理でしょう? 無茶を言って別れることになるよりも、立場を わきまえて、今までどうり大人しくしていれば 見て見ぬふりをしてあげる」 杏菜はゆっくり背もたれに体をあずけて 足を組み替える。 「結婚は…無理…」 和真が小さな声で繰り返えした。 杏菜はそれをききのがさなかった。 「私と彼が別れれば結婚出来るとでも思ったの? おバカさんね。新しいαをお祖父様が見つけて来て すぐに元通りよ」 「させないよ。今度は…以前とは違う」 柊生は和真を見つめて、和真だけに言った。 杏菜はそれを無視して続ける。 「彼が何と言おうと、あなたが相手にしてるのは その辺の中小企業のお坊ちゃんじゃないのよ 誰を相手にしてるか分かってるの?」 和真が 一番気にするだろう事を次々言われて 柊生はため息と共に額を手で覆った。 後でフォローするにしても 聞いてしまった言葉は消えない。 ずっと心のどこかに沈んで和真を責めるだろう。 これ以上 無駄に和真を不安にさせたくなくて 握られた手を引いて立ち上がろうとした。 その手を和真が強く引いて、小さく首を振った。 いつの間にか震えは消えていた。 「分かったよ。何でダメだったのか」 うっすら笑ながら和真が言った。 「別に俺はこの結婚に反対じゃなかったし、今でも 正直…何が正解か分からないけど… 今日話してみてハッキリ分かったよ あなたじゃダメなんだ」 「私…?」 杏菜の顔色が変わった。

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