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こらえきれずにクスクス笑って、 バカね、と言いながら 手で目を覆う。 柊生は和真に顔を潰されたまま、呆気にとられて 杏菜を見つめた。 ー 信じられない。。 この状況で杏菜が笑うなんて。 柊生は我にかえって こら!と和真の腕を つかんで顔からひっぺがす。 杏菜が笑いをこらえるために咳払いをした。 「変な子ね」 そう言われて 和真は仄かに笑って じっと杏菜を見つめた。 「杏菜さん今日イチ可愛い笑顔ですよ 」 「あら失礼ね。いつも綺麗だって、ついさっき 言われたばかりよ」 「あれ?誉めたのに~ 誉められ 慣れてる人は難しいね」 和真が柊生に同意を求める。 ー 何なんだコイツら…この状況で軽口叩くなんて どんな心臓してるんだ! 「…あなた本当に変な子ね。 柊生に捨てられたら相手して上げるから連絡して」 そう言って小さなバックの中から名刺を出して 和真に渡した。 それはそれは妖艶な笑みを浮かべて。 その名刺を和真が眺める前に、横から柊生が 奪い取った。 「あ、ちょっと」 「必要ないでしょ?」 柊生が自分のポケットにしまう。 杏菜は、もう一枚出して和真に渡した。 和真はそれを笑顔で受けとる。 チッと舌打ちをする柊生を見て 「知らなかった、本命の前だとバカになるのね」 杏菜はまたカラカラと笑った。 「バカどうし、お似合いよ」 その言葉に驚いて2人で杏菜を見つめた。 「ねぇ、ココとかココどうしたの?」 不意に杏菜が頬や手首を指差して和真を見る。 和真は手首を見て、あぁこれ? と同じように 手首を指差した。 普通にしていれば服にかくれて見えないが 手を伸ばすとチラリと覗くその痕。 「SMごっこの痕です」 和真がニッコリ笑って答えた。 柊生は目眩がして膝の上に肘をついて顔を覆った。 「縛るのが好きなんだよね?」 和真が好きな食べ物の話しでもするように 首を傾けて聞いてくる。

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